研究課題/領域番号 |
15K12795
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研究機関 | 聖隷クリストファー大学 |
研究代表者 |
藤井 徹也 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 教授 (50275153)
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研究分担者 |
菊地 美帆 常葉大学, 健康科学部, 講師 (00553322)
工藤 美子 兵庫県立大学, 看護学部, 教授 (40234455)
中山 和弘 聖路加国際大学, 大学院看護学研究科, 教授 (50222170)
篠崎 惠美子 人間環境大学, 看護学部, 教授 (50434577)
大林 実菜 人間環境大学, 看護学部, 助教 (80590009)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 性同一性障害 |
研究実績の概要 |
2015年度に抽出した性同一性障害(以下;GID)学生を受け入れる周囲の高校生とその親に対する質問紙項目について、研究者間でマスメディアによる情報の影響を考慮する必要があることを検討した。そのため自ら協力を申し出た高校生とその親の2組に質問項目について確認を行った。その結果、高校生に行ったクラス単位での自記式質問紙の回答については、周囲の影響を受けた回答となる可能性が聴取できた。そこで、調査方法を当初の方法からWeb上での方法とし、個別に回答する方法へ変更することとした。また親については、GIDと性的少数者の総称であるLGBTを区別する理解しやすい定義が必要であることを聴取した。そのため、文献の再検討を研究者間で行い、再度確認をしてもらい理解できる定義とした。また、GIDをカミングアウトした親友をもつ一般高校生の親に対して、その時の気持ちや、子供である一般高校生とGID高校生の関係に関する思いなどを確認した。また、学会・研修会でGIDである成人から高校時代の葛藤や期待した援助、親へのカミングアウト、周囲に関する不信感などの内容を2015年度に引き続き確認した。これにより中学生以下のGIDの自己認識は、その後変化する可能性があることが示唆された。当事者からは、その年齢の相談には、継続的な支援の必要性が述べられた。以上より、不可逆的な治療である性ホルモン療法が15歳から可能であるが、治療を受ける時期については当事者とその親との間で慎重に検討がなされるように支援する必要があると考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GID当事者である高校生とその親へのインタビュー調査については、2015年度に作成したインタビューガイドについて、GID当事者に確認を依頼した。GIDを意識し始めた年齢と親子関係を確認できる項目について意見を得た。特に、FTM(female to male)に関しては影響が強いと考えられたため、担当の研究分担者と検討をおこなった。このことにより、当初の計画よりも開始時期が遅れている現状があるが、次年度早々に研究分担者が高校在学中のGID高校生と、高校卒業後5年以内の当事者と親の10組を確保しデータを収集する予定であり、最終目的は、達成できる予定である。得られたデータは逐語録を作成し、質的に分析する。分析結果の信頼性・妥当性を得るため、研究者間で分析結果を検討する。また、質問紙調査については、本調査用の項目を作成して倫理審査の申請を行ったが、現在修正を行っている。しかし、承認後に直ちに実施できる準備は整っている。また、Web上の調査に変更したため、データ分析期間の短縮を図ることができるため、次年度の早期にまとめ、結果の発表が可能と考えている。インタビュー結果とWeb調査の結果を踏まえ、前期中に指針を完成させ、フリーに活用できるようにし、その改善点を把握する予定である。その後Web上で公開し、研究協力を呼びかけ、100組のGID当事者親子にデルファイ法で調査する。当初計画どおりの期間内に完成版指針を公表可能であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
Web上の調査を行い300組の親子に協力をえる。回収した回答の入力とGIDの捉え方、GID高校生がカミングアウトすることに対する思い、GID高校生が高校生活を送る上で生じる問題点、我が子の性に関する期待・希望などについての実態を明らかにする為の分析を行う。まとめた結果については、看護系学会で発表することで広く意見交換を行う予定である。また、インタビュー調査の対象は、高校在学中のGID高校生と、高校卒業後5年以内の当事者と親の10組とする。その際にホルモン療法の有無を考慮する。高校在学中のGID高校生とその親へ協力を得ることが望ましいが、当事者からの意見から協力を得ることが難しいことが考えられる。したがって、高校卒業後5年以内の当事者と親も調査対象とする。協力の得られたGID当事者、親に対し別々に面接調査を行う。面接調査は、調査内容の一貫性を担保するため、研究担当の同一研究者のみで行う。得られたデータは逐語録を作成し、質的に分析する。分析結果の信頼性・妥当性を得るため、研究者間で分析結果を検討する。各研究グループの進捗状況の確認や、必要な情報交換を目的とする研究打ち合わせを行う。各グループの結果に基づき、指針(ver.1)を作成後に高校在学中のGID高校生と、高校卒業後5年以内の当事者と親の10組を当事者とその母親に評価をもらう。その後、(ver.1)の回答を基に修正した指針(ver.2)も同様にGID当事者とその母親に評価をもらう予定である。同様な評価を複数回実施することで完成を目指す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
インタビュー調査については、当初計画でGIDを意識し始めた年齢と親子関係を確認できる項目について別々で確認する予定であった。しかし、情報収集の時点で、結果への影響があると判断して対象の条件について検討を行ったため、開始時期が遅れた。また、質問紙調査については、高校生に行ったクラス単位での自記式質問紙の回答では、周囲の影響を受けた回答となる可能性を考えたため、開始時期が遅れた。以上の理由により次年度に実施分の使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度のインタビュー調査として、GID当事者グループに呼びかけし、10組程度のGID当事者とその親をリクルートする。その際に親子関係を抽出できるようにインタビューする。Web上の調査を行い300組の親子に協力をえる。回収した回答の入力とGIDの捉え方、GID高校生がカミングアウトすることに対する思い、GID高校生が高校生活を送る上で生じる問題点、我が子の性に関する期待・希望などについての実態を明らかにする為の分析を行うための費用として使用する。
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