現代女性の未婚・晩婚化とジェンダーのゆらぎに関する研究

2015 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 15K12796
• 研究機関: 愛知淑徳大学
• 研究代表者: 川合 南海子 (久保南海子) 愛知淑徳大学, 心理学部, 准教授 (20379019)
• 研究期間 (年度): 2015-04-01 – 2018-03-31
• キーワード: ジェンダー・パーソナリティ / 性的役割観 / 恋愛イメージ / 腐女子

研究実績の概要

いまや「クール・ジャパン」ともいわれ、国際的にも評価の高い日本のサブカルチャーであるが、そのひとつに、男性同士の恋愛を描く「ボーイズラブ（BL）」といわれるジャンルがある。特に、そのようなBL作品を愛好する女性たちは「腐女子（ふじょし）」とよばれ、そのありようへの関心が高まっている。しかし、腐女子は現代サブカルの一大ポピュレーションであるにもかかわらず、彼女たちの実態はあまり研究されてこなかった。最近になって、論考やエスノグラフィ調査、またテクスト分析などがいくつかあるものの、数量的データの収集による実証的な研究はまだなされていない。
そこで本研究では、20歳前後の女子大学生を対象に、ジェンダー・パーソナリティと恋愛および母性観、共感性や他者意識、プライバシー志向性に関する質問紙調査をおこなった。対象者を、BLを好む「腐女子群」、恋愛ものを好む「恋愛群」、BLや恋愛もの以外のジャンルを好む「非恋愛群」に分類して分析をした。その結果、腐女子群は、自身のジェンダー・パーソナリティや共感性，他者への意識において、腐女子でない女性との違いはなかった。一方で、恋愛観については、恋愛ものを好む女性は恋愛を大切であり必要なもの、成長を促すものと考えている一方で、腐女子はあまりそう考えていないことが示唆された。さらに、腐女子は、社会的通念としての伝統的な母親役割を信じる傾向が、腐女子でない女性よりも顕著に低いことが明らかとなった。また、腐女子は恋愛ものを好む女性よりも、生活において個人の時間や趣味を重視していることが明らかとなった。本研究は、恋愛や性役割に対する考え方を通して、腐女子のジェンダー観を明らかにするとともに、これまで論考などで推察されるのみであった腐女子の心的傾向について、実証的なデータからの考察を可能にした。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画にて予定していた質問紙尺度６種類が実施でき、かつその分析も順調に進んだ。現在はその結果をまとめた学術論文の執筆と、学会発表の準備を進めている。研究は順調に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

平成27年度の調査結果をまとめて学術論文を執筆する。また、その成果を、学会で発表するための準備を進める。そして、前年度の調査によって明らかになったジェンダー観や性役割に基づいた潜在的な態度、偏見などについて、次の質問紙調査および分析を行う予定である。さらに、詳細な検討を行うためのエスノグラフィ調査を開始し、個別のケースについてデータの蓄積を進める。

次年度使用額が生じた理由

当初の計画時に計上していた予算の執行が、初年度において低く押さえられているのは、予備的な分析という見地から現存の備品および人材を活用して研究を行ったためである。次年度は初年度の成果を拡張し、新たな分析方法に必要な備品の購入や大規模調査での謝金などに充てることを計画している。

次年度使用額の使用計画

上記の理由のところでも記述したように、次年度では新たな分析方法を検討している。そのために分析ソフトの購入を計画している。また、初年度でおこなった調査的研究に加えて、実験的研究も視野に入れている。そのために必要なコンピュータや視聴覚機器の購入を計画している。さらに、インターネット調査などを活用した大規模調査を予定しており、その経費に使用を計画している。