本研究では,男性同士の恋愛作品(BL)を愛好する女性たちが,異文化や他者への受容や同性愛に対する心理・行動的側面においてどのような特徴があるのかを質問紙調査を用いて検討した。<方法と手続き>女子大学生102名を対象とした。(1)異文化感受性発達尺度「受容」「行動適応」の2因子計20項目について7件法で回答を求めた。(2)ゲイ/レズビアンに対する態度尺度「心理的距離」「社会的認知」の2因子計15項目について4件法で回答を求めた。(3)ふだんよく読む小説やマンガのジャンルについて回答を求めた。<結果と考察>BLをよく読む群(33名),恋愛作品を読まない群(33名),男女の恋愛作品を好む群(36名)の3群に分けて、ゲイとレズビアンに対する態度尺度の「心理的距離」について 3要因分散分析を行ったところ,各群とゲイ/レズビアンに対する態度との交互作用が有意傾向となった。特に,恋愛群のレズビアンに対する心理的距離がゲイより有意に低いことがわかった。この結果から,男女の恋愛作品を愛好する人は恋愛における当事者意識が強いために,恋愛対象が同性である男性のみに向けられるゲイよりも,レズビアンから自身に恋愛感情を向けられるかもしれないという恐怖や不快感が心理的距離をとらせたと考えられる。一方で,「社会的認知」について各群およびゲイ/レズビアンの有意差はなかった。また,異文化感受性発達尺度の得点について2要因の分散分析を行ったところ,交互作用が有意となり,恋愛群・非恋愛群よりもBL群の方が異文化への受容性が高いことがわかった。腐女子自身は異性愛者である場合が多いにもかかわらず,同性愛者という自分と異なる価値観を持つ人々の物語を好んで読むことから,多様な価値観や考えについて接触する機会が多い。物語を通しておこる多様性への接触頻度の高さが,異文化に対する受容度を高めている一つの要因だと考えられる。
|