本研究は、景観およびイメージ創造に注目してリゾートの発展プロセスのモデル化を試みるものである。研究対象は、発展の著しいオーストリアアルプスのスキーリゾートとした。具体的には、フィールドワークで解明されたスキーリゾート景観の諸要素が時代の変遷とともにどのように変化してきたのか、同時にリゾートのイメージ創造がどのようになされてきたのかについて整理する。これらに基づいて、リゾートの発展プロセスのモデルを構築し、そのモデルが適合する地域的な条件を明らかにする。 H29年度の研究実績は次の通りである。(1)インスブルック大学図書館等において収集したアルプスにおけるスキーリゾートに関する文献の整理、統計資料に基づいて、スキーリゾートにおける宿泊者数と宿泊施設の動向を分析した。これらの結果と、これまでの日本のスキーリゾートに関する研究成果を比較検討し、単行本を刊行した(H29年4月)。 (2)夏季および冬季の2回にわたって、オーストリア、チロル州で現地調査を実施した。イシュグルでは、村長および観光協会の専門家に聞き取り調査を行った。その結果、滞在スキーヤーのニーズに合わせたスキー場内施設開発、リゾート中心部にインフラ整備を行っていること、スキー場の規模がスキーヤーを惹きつける第一要因であること等が明らかになった。こうした諸施設やサービスがイメージ創造に大きな役割を果たしていると考えられる。またゼルデンにおいて景観調査を継続して実施した。 (3)日本のスキーリゾートにおけるインバウンド・ツーリズム対応とオーストリアの例とを比較検討した。その結果の一部は、日本地理学会秋季学術大会および日本スキー学会第28回大会でのシンポジウムにおいてそれぞれ発表した。そこでは、リゾートの発展において景観およびイメージ創造の変遷とともに、両地域で大きく異なる「スキー文化」が重要な役割を果たすことを指摘した。
|