研究課題/領域番号 |
15K12800
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
佐野 直子 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 准教授 (30326160)
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研究分担者 |
浜本 篤史 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 准教授 (80457928)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 聞き書き / 地域おこし / オーラルヒストリー / 域内観光 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、今後の高浜市での実践研究との比較・参考事例となるような、フランスの農山村地域や日本の沖縄、琵琶湖畔地域のNPO団体や博物館、和歌山の観光ボランティア団体など、国内外で地域の環境や文化保全のための市民活動を展開している団体への調査・視察を中心に進めた。研究代表者はフランスで言語保全教育活動を実践している人びとへの聞き書き調査を実践し、平成29年度にその成果を国際オクシタン語学会で発表する予定である。また、沖縄で積極的な「沖縄の言語の商品化」を実践している事例についてもインタビュー調査を実施した。その成果は平成29年度中に刊行される予定である。 また、名古屋市立大学で近隣地域で積極的な町づくり、文化保存の活動をしている団体の方を招聘しての講演会やセミナーを実施することで、近隣地域のネットワークづくりにもつとめた。また、オーラルヒストリー学会や観光学術学会大会などの関連学会に参加することで、学術的ネットワークの構築や現在の問題関心などについての情報収集にも務めた。 本研究課題の中心的なフィールド地・実践の場である高浜市では、平成28年度からかわら美術館が「みんなで美術館」プロジェクトを立ち上げており、美術館館員と今後の連携についての議論を行った。そして高浜市役所が、約40年ぶりとなる『高浜市誌』編纂プロジェクトを立ち上げた。町の「正史」を専門家に依頼して執筆してもらうという形ではなく、平成29-33年度にかけての市民参加型の町づくりプロジェクトとして進めるというアイデアのもと、生活誌部門において「聞き書き」の要素をとりいれた章(または別冊)を設けることとなった。その過程で、研究代表者に、生活誌部門の編集委員として本プロジェクトに参加するよう依頼がなされた。平成29年度は、高浜市民とともに「聞き書き」の実践を行って原稿の作成や編集を担当する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時には予定していなかったことだが、研究代表者と研究分担者がそれぞれ前期・後期にサバティカル研修を受けることになったため、平成28年度は申請当初予定していた高浜市との実践的な研究計画は十分に進められなかった点は、やや遅れがでている。ただし、高浜市とは一定の連絡をとりつづけ、高浜市かわら美術館を訪問して市民参加型美術館のための方策について議論をするなどの関与は続けることができたため、研究代表者が帰国後すぐに高浜市誌編纂の議論を進めることができた。 また、平成28年度は、国内外の先進的な地域での実践の視察・調査や、地域に根付いた活動を展開する方々との交流をはかることを中心にしたため、研究成果を出すには至っていない。ただ、その分、東海地域にとどまらない多様な町づくり実践者のネットワークを構築することができたと考える。今後はそのネットワークを活用しつつ、高浜市との実践をいかに充実したものにしていくかが課題となる。 最終年度となる平成29年度に刊行する予定である「聞き書きマニュアル」の作成については、代表者・分担者と議論してドラフトを作成した。また、高浜市が従来地域活性化事業として展開していた、高浜市民を中心にした映画作成プロジェクトとのジョイント企画として、中高生による「聞き書き」場面の撮影・録画と、それをもとにした映像版の聞き書きマニュアルビデオの作成を構想している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、高浜市誌編纂プロジェクトに編集委員として参加し、市民が参加する聞き書きの実践と編集、「聞き書き」マニュアルの作成(冊子・ビデオ)などのプロジェクトを高浜市とともに実践する。このプロジェクトの中心メンバーとして参加することで、「聞き書き」マニュアルの作成、「聞き書き」による市民を主体とした町づくりの活性化、域内観光の促進などを直に見聞きすることが期待できる。高浜市誌の完成は平成33年度以降となるが、今年度に市民や研究代表者・分担者の勤務する大学の学生も参加する形での聞き書きとその成果は、高浜市が町づくりのために実践している市民を中心とした集会「たかはままるごと宝箱」とのジョイント企画で発表する機会を設ける。 また、今年度収集することになる聞き書きデータを今度どのように活用するかについて、高浜市とともに議論を進めていく。そのために、ライフストーリー研究やオーラル・アーカイブの活用が進んでいる日本の他の自治体やフランス・イタリアなどを中心とした地域の視察や調査も並行して進める。特に南フランスでは昨年州合併が実施され、新しく「オクシタニー」州が誕生したことで、より積極的な「オクシタニー文化」の保存や活用といった文化政策を進めていこうとする機運が生まれていることから、7月の国際オクシタン語学会では研究者や主催自治体(オクシタニー州アルビ市)文化政策担当者、地元文化団体などへの聞き取りを行う。。 研究成果は平成29年度の国際オクシタン学会、平成30年度以降の日本オーラルヒストリー学会、観光学術学会などで積極的に発信する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者と研究分担者が、それぞれ申請当初予定していなかった平成28年度前期・後期に勤務先大学のサバティカル研修を受けることになり、国内外での出張費や高浜市との実践などの計画を遂行できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果発表のため国際学会に参加・国内外での調査のための国内・海外旅費 域内での地域おこし、町づくりに積極的に関わる団体や個人とのセミナーや講演会を実施していくにあたっての謝金 「聞き書き」マニュアル冊子の印刷や配布のための印刷費・郵送費など
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