研究課題/領域番号 |
15K12805
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研究機関 | 西南女学院大学 |
研究代表者 |
友原 嘉彦 西南女学院大学, 人文学部, 准教授 (60633261)
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研究分担者 |
庄子 真岐 石巻専修大学, 経営学部, 准教授 (40587903)
鈴木 洋子 (長尾洋子) 和光大学, 表現学部, 准教授 (20303034)
高田 晴美 四日市大学, 総合政策学部, 准教授 (20633259)
新名 阿津子 公立鳥取環境大学, 環境学部, 准教授 (20578223)
丸山 奈穂 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (60612603)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 女性 / 観光 / 女子旅 / 震災復興 / 地域伝統芸能 / 旅文学 / ジオツーリズム / 世界遺産 |
研究実績の概要 |
本研究は「女性と観光に関する総合的研究」をテーマとし、観光者側では主として、観光が現代女性の人生観や人生設計に与える影響について、観光地側では主として、観光が現代女性の社会的役割に与える影響について明らかにする。そして、観光原理の1つとして、男女共同参画や観光立国への移行期における女性と観光を巡る個々の特徴的な現象と共通性・全体像を示すことを目的としている。これを踏まえた2016年度の研究実績の概要は以下の通りである。 観光者側の研究について、友原は若年女性に極めて人気の高い西欧に注目し、女性の観光を牽引していると目される一人旅の女性観光者に絞って、彼女達の観光の移動と行動、観光観、人生観などを調査すべく、イタリアのローマとフィレンツェを事例にフィールドワークを行なった。高田は2015年度に行なった林芙美子の作品(『浮雲』など)の分析から、女性と旅との本質的な関わりについての考察をさらに押し進め、高橋たか子『誘惑者』やその他海外文学も視野に入れて、男女の旅の本質的な違いについて考察した。また、旅の形態の分類も試み、いわゆる「女子旅」に求められる要素についても抽出して考察を行なった。 観光地側の研究について、庄子は東日本大震災後における被災地の観光の変化を統計や観光振興計画などから明らかにし、それらを踏まえた上で、被災地の観光における担い手としての女性の役割を検証した。鈴木は鶴崎踊および本場鶴崎踊大会が20世紀初頭以来、観光との関わりでどのような盛衰を辿ったかについて明らかにした。また、その過程における鶴崎踊の芸態や普及宣伝にまつわる表象形成、行事遂行におけるジェンダーの役割について考察した。丸山は主に富岡製糸場周辺で聞き取り調査、アンケート調査を行なった。新名は2016年度の業務量の増加により、本研究のための時間を確保することができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度末締め切り、2017年度半ばに本研究にかかる共著を出版するため、新名以外のメンバー全員の進捗状況は概ね順調な進展を見せている。新名は前述のように、2016年度にかかる業務量の予期せぬ急増のため、研究にかける時間が思うように確保できなかったが、2017年度に巻き返すことが可能であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
全体として研究を仕上げ、3年間に渡った本共同研究の結論と提言をまとめていく。 2017年度における研究として、友原はこれまでの研究のように「女子旅」目的地にすでになっている都市や地域には拘らず、「女子旅」の目的地になっていない都市や地域について動向を研究したい。具体的には鉱工業都市、地域を念頭に置いている。庄子は被災地における担い手としての女性の役割について検証を重ねる。前年度のインタビュー調査から得られた知見をベースとして、被災地の案内のみならず、体験・交流型のコンテンツを展開する組織や団体に調査の対象を広げる。鈴木は観光と民俗芸能が交差する領域において、女性の表象や役割が社会生活全般における規範とどのような関係があるか考察を深める。高田は女性と旅(もしくは男性と旅)についての包括的な分析をするには現時点ではまだ扱った作品数が少ないため、さらに対象を広げて、より多彩な論点からの考察を深める予定である。たとえば、長年欧州に在住しており、旅をテーマにした作品も多い多和田葉子などから、むしろ<女性性>が排除されていく旅のあり方なども参考にしたい考えである。新名は8月にマレーシアで現地調査(10日間~2週間程度)を行ない、山陰海岸ジオパークとの比較検討を行なう。丸山は平泉での聞き取り調査を実施する。また、アンケート調査の実施及び調査結果の取りまとめも行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究グループのうち、友原と鈴木は計画通り使用したが、庄子、高田、新名、丸山は分担金の一部または全部を2017年度に繰り越した。庄子は自身の生活圏とフィールドワークのインタビュー対象者のそれとが重なっていたことで交通費の負担がなかったためである。高田は必要な文献にかかる費用を当初の想定よりも低く抑えることができたためである。新名は前述の通り、研究の遂行ができなかったためである。丸山はアンケート調査が当初の想定よりも短期間で終わったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
共同研究グループのうち、友原と鈴木は2017年度も計画通り使用する。ほかのメンバーの主な使用計画は次の通りである。庄子、高田は2017年度に本研究の成果発表として行なうシンポジウムへの交通費・宿泊費等に充てる。新名はマレーシアでのフィールドワークにかかる費用に充てる。丸山は必要な文献の購入費用に充てる。
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