研究課題/領域番号 |
15K12809
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
宮島 光志 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (90229857)
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研究分担者 |
津田 雅夫 岐阜大学, 地域科学部, 名誉教授 (10144099)
李 彩華 名古屋経済大学, 経営学部, 教授 (10310583)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 近代日本哲学 / 人文学 / 制度化 / 東アジア / 哲学辞典 / 翻訳 / アカデミズム / 桑木厳翼 |
研究実績の概要 |
本年度の主たる事業として、2016年10月1日に中国の厦門大学において、中華日本哲学会と共催で国際シンポジウム「東アジアにおける近代哲学の生成と展開―<人文知の制度化>の観点から」を開催した。日本側からの報告は、宮島光志「近代日本哲学と〈知の制度化〉―桑木厳翼の事績を辿る」(基調講演)のほか、森下直貴「近代日本哲学における「理」の転回―西周から西田幾多郎へ」、加藤恒男「井上哲次郎の哲学宗教倫理学―〈人文知〉に背馳する」、川合大輔「〝ジャーナリズム〟概念の変遷から読み解く〈知の制度化〉」の3題であり、中国・台湾側からも4名の日本哲学研究者が基調講演および報告を行った。さらに日本側からは、李 彩華「〈知の制度化〉から考える清末民初中国哲学の日本での伝達状況」と三谷竜彦「〈知の制度化〉から見た明治・大正期における美学・芸術学の状況」が、予稿集に掲載された。なお、国際シンポジウム開催後、中国側からの要請により、日本側の論文3編(宮島、森下、李)が中国語に翻訳され、福建師範大学の研究叢書『円卓』に採録されることになった。 この国際シンポジウムに向けて、日本側の研究メンバーは、西周、井上哲次郎、桑木厳翼の3者を中心として、明治・大正期における近代日本哲学の生成と展開を、〈人文知の制度化〉という統一的な視点からダイナミックに捉える努力を重ねた。その際には、とりわけ中国人の日本哲学研究者との対話を通じて、「東アジア(漢字文化圏)における日本哲学」を強く意識した研究を推進することになった。すでにこうした知的営為自体が、近代日本哲学の草創期に和語・漢語・欧米語を相互参照しながら新たな哲学用語を鋳造した西周などの事績に思い致すことであり、新たに制度化され始めた人文知の創成を追体験することに他ならなかった。そうした成果を『哲学大辞書』の記述に即して「客観化」する作業も一部で具体化された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年10月に本研究課題の最も重要な事業である国際シンポジウムの開催が実現し、その後、日本側の各提題者が完成原稿を作成して『哲学と現代』に投稿するまでは、「おおむね順調に進展」していたと言える。 しかし、2017年の1月から3月にかけて、研究代表者(宮島)の体調不良および病気入院により、その後の研究会活動は縮小され、当初予定していた『哲学大辞書』に関する文献学的研究の推進よび関連資料の整理作業にも多少の遅滞が生じた。以上の理由から、本研究課題の進捗状況は、全体として「やや遅れている」と自己評価せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度を迎えて、過去2年間の研究成果を概括すると同時に、具体的な研究成果については、本研究課題に関するホームページを(富山大学大学院医学薬学研究部・医療基礎学域[哲学]のホームページと共同で)開設して、社会への還元を試みる。とりわけ、浩瀚な『哲学大辞書』に関する簡易なデータベースを構築して、主要項目の閲覧、主な執筆者と担当項目の検索などが可能なシステムを提供したい。それを起点として、日本哲学のみならず、国語学をはじめとする隣接諸領域の研究者に向けて、情報発信を試みる。 さらに日中共同研究については、今回の国際シンポジウムを通じて築いた協力体制をより強固なものとすべく、当面は研究情報の交換など、地道な学術交流を重ねていく予定である。具体的には、中国人研究者の研究成果を上述のホームページ上で公開するなどの方法により、現代の情報化社会に相応しい〈知の制度化〉研究を推進していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
厦門大学外文学院で開催された国際シンポジウムの共催費(予稿集他の印刷費、中国側参加者の交通費、運営スタッフのアルバイト代など)として、本研究課題の必要経費から20万円程度の支出を予定していた。しかし、おもに経理上の理由から、予定していた共催費が支出できなくなったので、その分が未使用金額として残された。
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次年度使用額の使用計画 |
最終(平成29)年度には、『哲学大辞書』の主要項目などに関する簡易データベースを構築して、本研究課題の研究成果を公表するために開設予定のホームページ上で情報発信する予定である。そのための必要経費(人件費、消耗品購入)として、平成28年度分の未使用額の大部分を有効に使用する計画である。
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備考 |
中華日本哲学会のホームページには、本研究課題による国際シンポジウム「東アジアにおける近代哲学の生成と展開―〈人文知の制度化〉の観点から」の関連情報が記載されている。(http://www.cssjp.org/index.php m=announce&c=index&a=show&aid=11)
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