研究課題/領域番号 |
15K12809
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
宮島 光志 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (90229857)
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研究分担者 |
津田 雅夫 岐阜大学, 地域科学部, 名誉教授 (10144099)
李 彩華 名古屋経済大学, 経営学部, 教授 (10310583)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 哲学大辞書 / 井上哲次郎 / 桑木厳翼 / 元良勇次郎 / 明治哲学 / 大正哲学 |
研究実績の概要 |
本研究では『哲学大辞書』刊行事業の中心人物である井上哲次郎と桑木厳翼に焦点を絞り、西洋哲学を日本の高等教育に導入した事跡を《(人文)知の制度化》の典型として浮き彫りにした。両者は東京帝国大学文科大学哲学科を拠点として日本独自の哲学界を形成すべく奮闘したが、その際に西洋哲学と東洋哲学の総合、哲学と隣接諸領域(社会科学と一部の自然科学も含む)の架橋を強く志向していた。彼らの統合性(知の総合)に対する志向は、今日の「国際性と学際性」を重視する知的状況に鑑みて、正当に評価されるべきである。なるほど両者が推進した《(人文)知の制度化》は近代国家の形成という目的と強く結ばれており、勢い「知の硬直化と形骸化」を招いたことは否定できない(井上哲次郎による教育勅語の哲学的基礎づけなど)。だが、近代日本哲学の草創期に緊密な〈知のネットワーク〉を組織して具体化された『哲学大辞書』は、当時の〈(人文)知のパノラマ〉や〈知識人の肖像(自画像)〉として現代でも不朽の価値を有する。 本研究では元良勇次郎の存在にも注目した。浩瀚な著作集(クレス出版、2013-17年)の刊行事業も手伝って、元良は心理学を定位した《知の制度化》の立役者として脚光を浴びている。彼は『哲学大辞書』の刊行事業に携わると同時に、没後は同事典(追加)に立項されて功績を称えられた。本研究ではさらに哲学内部の諸分野と隣接諸領域を担った主要人物にも注目し、その功績と近年における再評価の機運を跡づけた(大島正徳、朝永三十郎、高楠順次郎、姉崎正治、島地黙雷、渡辺海旭、浮田和民、谷本富、坪井正五郎)。 なお『哲学大辞書』の電子ファイル化により、同書に収載された項目や人名の検索が容易になった。また近代日本における広範な《知の制度化》の具体例として「教育制度の拡充」に着目し、長野県松本市の旧開智学校と旧制高等学校資料館を訪問して関連資料を収集した。
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