研究課題/領域番号 |
15K12812
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研究機関 | 福山平成大学 |
研究代表者 |
上村 崇 福山平成大学, 福祉健康学部, 教授 (50712361)
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研究分担者 |
茨木 正治 東京情報大学, 総合情報学部, 教授 (10247463)
眞嶋 俊造 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (50447059)
塚本 晴二朗 日本大学, 法学部, 教授 (90217282)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 偏向報道 / 客観報道 / 報道倫理 / ジャーナリズム倫理 / 嫌韓 / ヘイトスピーチ |
研究実績の概要 |
「偏向報道・極化」問題における実証的研究と倫理学的研究の統合的把握において、本年度の研究計画では、「実証的研究・倫理学的研究の学際的・統合的把握の試み」を研究目的として掲げている。昨年度は、偏向報道・客観報道の倫理学的枠組みと実証研究の手法を確定した。本年度は、この概念的な枠組みと手法をもとに、実証的方法と理論的方法の整合性ないし役割分担についての統合を試みた。 具体的には、偏向報道と客観報道の類型的な枠組みを倫理学的研究の中で確定するとともに、実証研究では、週刊誌報道と新聞報道の嫌韓に関する言説の経年的変化を分析した。詳しく述べると、偏向報道と客観報道は、客観報道をジャーナリズム報道における「善」と位置づける立場から偏向報道を「是正すべき対象」として検討する類型や、報道はそもそも特定の立場からある事象を報道するものであり、偏向を前提として、広く市民に事実を告発しているかどうかで報道を判定する類型などが存在することが示された。実証研究では、日本と米国、日本とロシアは週刊誌報道、新聞誌報道ともに親近感を持つ肯定的な言説(米国)、疎遠な印象を持つ言説(ロシア)のように経年的に傾向が変わらないのに対し、日本と韓国の週刊誌報道と新聞報道においては肯定的な言説や否定的な言説が、韓流ブームや領土問題など社会的事象に影響することが示され、言説と事象の関係性を倫理的にどう捉えることができるかという課題が浮かび上がった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
倫理学研究分野では、客観報道と偏向報道の倫理的基準の類型化が示されている。実証研究分野では、週刊誌報道と新聞報道の関連性を日韓関係に限ってではあるが経年的に分析することができた。さらに、実証研究から、政治的・文化的事象が日韓関係の報道やそこにみられる言説に直接影響することが示されたため、こうした事象を報道倫理として是正すべきか、あるいは是正すべきではないか、また是正するのであればその倫理学的根拠と正当化はどのように取り組まれるべきか、という課題が明らかとなった。それゆえ、「実証的研究・倫理学的研究の学際的・統合的把握の試み」という本年度の目標はほぼ果たされたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の取り組みは、偏向報道の文化的・政治的要因を実証的に探求し、その相互関係を明らかにするとともに、偏向報道の倫理的制約条件が存在するかどうかということについて、実証的側面・倫理的側面から追求していく。その結果、これまでとは異なった報道倫理/ジャーナリズム倫理の視座を確定することが可能になると期待される。 また、本年度は研究分担者の眞嶋俊造がブカレスト大学に赴き、海外交流を図りながら、ジャーナリズム倫理の国際的な連携を計画している。国際的な交流を見据え、国際的な方面でも研究の推進が期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の実証研究費用に投下した資金が予測よりも下回った。 ジャーナリズム倫理の国際シンポジウムを企画していたが、依頼講師が招聘先の都合により招聘が不可能となり来日できず、国際シンポジウムの開催が実現しなかった。そのことから、開催運営資金が消化されなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
実証研究に資金を継続的に投下することによって研究の進展を図る。また、本年度、研究分担者をブカレスト大学に派遣したことを利用し、今後の国際シンポジウム開催を計画し、シンポジウム実現の資金に充てる。
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