研究課題/領域番号 |
15K12814
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研究機関 | 大正大学 |
研究代表者 |
林田 康順 大正大学, 仏教学部, 教授 (50384681)
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研究分担者 |
小川 有閑 大正大学, BSR推進室, BSR担当 (20751829)
弓山 達也 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (40311998)
高瀬 顕功 大正大学, BSR推進室, BSR担当 (90751850)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多死社会 / 超高齢社会 / 社会貢献 / 社会的責任 / 仏教者 |
研究実績の概要 |
当該年度においては、多死社会の現状を把握・分析することに主眼を置き、書籍購読、研究会開催をおこなった。なかでも、研究会においては、4回にわたり、ゲストスピーカーを招き、多死・超高齢社会の実態を知る機会を得た。①在宅介護・訪問看護事業を東京都内で展開するA氏は、終末期にあたっては、医療、介護、看取り、そして葬儀、供養までをトータルでデザインすることの重要性を指摘。ここに宗教者が加わることは自然な流れであること、また、終末期の在宅看護・介護の現場では、利用者からの宗教的な問いやスピリチュアルな問いに直面し、対応に苦慮するというシーンが多く、そういった問いに対応しうる専門的な知識を持ち、宗教的にも実践している僧侶や宗教者への協働のニーズはあると指摘した。 ②高齢者医療を専門とする医師B氏は、仏教者に期待することとして、「地域のまとめ役」、「終末期ケアへのさらなる参加」、「社会変革(価値体系の変革)」、「認知症ケアのイノベーション」、「研究の推進」、「よりよい社会とは何かという議論」の6点を提示した。 ③高齢者福祉施設の責任者であるC氏は、施設で仏教的なケアを求められたり、実際に提供したりすることが多く、さらには亡くなった利用者をともに見送ることは、他の利用者の精神的安定に寄与していると分析、宗教的ケアのニーズと仏教者の役割の可能性を論じた。 ④厚生労働省官僚で地域福祉を担当するD氏は、高齢者を地域全体で、諸機関が協働をしてケアをしていく必要性を提示、具体的にはボランティアや民間団体を活用し、新たな社会的資源を創出、公私の諸機関が緊密・柔軟に協力することであり、公的機関と寺院との協働もその範疇に入ると述べられた。 以上のように、研究会や関連書籍から、多死社会の現場において、仏教者が果たすべき役割があるとの現状分析を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、多死社会に対応するべく様々な活動をしている寺院に聞き取り調査を行う予定であったが、ステークホルダーとの関係性のなかで生じる「社会的責任」を探求するにあたっては、寺院・僧侶そのものではなく、寺院・僧侶と協働して多死社会に対峙するステークホルダー、具体的には医療や介護の従事者から、率直な意見を聞くべきであるとの本研究メンバーでの合意があった。そのため、当初の予定を一部変更し、医療・看護・介護・行政の各専門家をゲストスピーカーに招くこととなった。本科研の目的には合致したものであるが、変更した点があるため、このような区分選択とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後、アンケート調査を実施する予定である。そのために、調査紙のたたき台を作成し、科研メンバーおよび27年度の研究会ゲストスピーカーにも依頼し、質問項目を検討する。その後、大正大学研究倫理委員会に諮ったうえで、パイロット調査を行う。パイロット調査は、老人施設職員や訪問看護従事者などに協力を得る予定である。調査紙が完成次第、老人福祉施設や訪問看護ステーションなどに郵送する。調査先については、数百の回答が得られることを目標として、今後、研究会において検討を重ねる。調査紙の回収、分析を経て、次年度、学会において成果の発表を行うとともに、インタビュー調査を了解したアンケート回答者を訪問し、聞き取りも行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、当初の予定では、多死社会への取り組みをすでに始めている寺院への聞き取り調査を行うこととなっていたが、先述の研究計画の一部変更により、聞き取り調査のために計上した旅費を使用せずに済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
アンケート調査ののち、各地の老人施設や訪問看護ステーションへの聞き取り調査を行う予定であり、そのための旅費、また、アンケート結果の入力謝礼などに使用する予定である。
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