本研究は、近代中国でもっとも長命の英文雑誌であったChinese Recorder誌(The Chinese Recorder and Missionary Journal、中国名『教務雑誌』)を分析の軸とすることによって、19世紀後半から20世紀前半にかけて、キリスト教が近代中国の諸宗教に及ぼした具体的な影響を明らかにしようとしたものである。住家正芳(研究代表者)が儒教および知識人層、鈴木健郎(研究分担者)が道教、エリック・シッケタンツ(研究協力者)が仏教、宮田義矢(研究協力者)が民間信仰および秘密結社に関する記事を担当して分析した。平成29年度と30年度には宮田が仏教についての記事分析も担当した。 初年度である平成27年度から3年目の平成29年度の前半まででChinese Recorder創刊(1868年)から第2次世界大戦中の終刊までの記事についての検討を行い、平成29年度の後半から当初の研究期間を1年延長した平成30年度には、焦点を絞るべき論点の再検討と、それに伴って各自の担当分野の記事を再度、通覧的に検討することによって、研究全体のとりまとめを行った。 以上の研究によって、本研究は、中国で活動した宣教師たちが自らの直面した儒教、道教、仏教、民間信仰といった中国の諸宗教をどのように理解したのかを具体的に明らかにするとともに、そこに見られるキリスト教を基準とした他宗教理解の論理についても明らかにした。これは、近代中国における宗教概念の歴史的構築過程を通時的に明らかにするものとして、宗教研究における宗教概念の議論にとって意義を有するものである。
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