研究実績の概要 |
平成27年度は、地質学の発達と世界創造年という概念自体の崩壊がキリスト紀年を如何に変容させたかについて研究した。 ①17世紀以降、キリスト紀年そのものが変容し宗教的根拠を喪失したことで非キリスト教圏においても受け入れられる受容基盤が形成されたことに関する研究を、Roy PorterのThe Making of Geology等に始まるイギリス地質学史の研究成果を活用しながら遂行した。 ②Venerable Bedeが8世紀にHistoria ecclesiastica gentis Anglorumで初めて提案した紀元前という概念 (ante uero incarnationis dominicae tempus) は、紀元前4004年と計算された世界創造の日からキリスト生誕までを逆算して数えるためだけに考案されたものが、その後どのように受容され、同時に拡大解釈されてきたのかに関する研究を行った。 ③James Huttonは1788年の論文“Theory of the Earth”で、"The result, therefore, of our present enquiry is, that we find no vestige of a beginning, no prospect of an end." と述べている。この発見は、過去と未来は無限に双方向に伸びているものであるという時間観・歴史観を提出する基礎となったことを研究した。
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