研究実績の概要 |
本年度は、アラビア数字が、紀年表記にいつ頃から導入され始めたのかの特定と、その社会文化的・紀年表記的背景に関する調査研究を行った。 1.キリスト紀年が脱宗教化して、世界中で使用されるようになったことを可能にさせた背景として、ヨーロッパで16世紀頃から使用され始めたアラビア数字の存在がある。本年は、ローマ数字がどのようにしてアラビア数字に置き換わっていったのかを、アラビア数字を使用した最も初期の歴史年表である Jean Funck, Chronologia : hoc est, omnium temporum et annorum ab initio mundi usque ad resurrectionem Domini nostri Iesu Christi computatio (Nueremberg, 1545) を中心に、それらの紀年表記法に焦点を当てながら調査研究した。 2.次に、なぜローマ数字からアラビア数字への数表記(numerical notation)の変更が行われたのかの研究を行った。その研究結果として言えることは、16世紀以前まで使用されていたのはローマ数字であるが、この数字は、ゼロという概念表記手段を欠いていた。ところがアラビア数字はゼロ概念とその表記符号を持つので、年表記にはただ4つの数字を羅列するだけという画期的な数表記法を提出したことが挙げられる。 3.アラビア数字の採用は近世ヨーロッパにおける科学革命を可能にさせた重要な背景のひとつである。このことを、ケンブリッジ大学図書館が所蔵する Issac Newton の自筆ノートを中心に調査研究した。 4.アラビア数字の使用とキリスト紀年の世界伝播の関係を調査研究するために、19世紀以降の非キリスト圏におけるキリスト紀年の使用に関して、関連資料の蒐集と調査研究を行った。
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