研究課題/領域番号 |
15K12821
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
志村 恵 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (50206223)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 青島 / 音楽活動 / 第九初演 |
研究実績の概要 |
本研究は、ドイツ人の文化的特性に帰せられがちな第一次世界大戦後の日本国内のドイツ人俘虜収容所における音楽活動を脱神話化し、収容所内での高度の音楽活動を可能にした前提条件であるドイツ租借地時代の青島の文化活動の実際を明らかにするものである。この目的のため、俘虜たちが渡日前に居住していたドイツ租借地時代の中国・青島における文化活動、特に音楽活動を当時の史料(官報、新聞等)をもとにまとめるとともに、その背景にあった租借地におけるドイツ帝国政府及び海軍・総督府の文化政策全体及び文化交流の実態について、当時の史料(海軍・総督府関係資料:ドイツ公文書館軍事部門所蔵等)に基づき検討しようとするものである。 2015年度においては、金沢大学図書館所蔵の『Tsingtauer Neueste Nachrichten. 1904~1914』(青島新報)の記事を調査し(1911―1912年前半)、掲載されていたさまざまな音楽会の予告や批評記事をワード文書として入力した。また、金沢大学と京都大学に所蔵されている『Amtsblatt fuer das Schutzgebiet Kiautschou』(青島官報)の調査も行ったが、こちらには音楽会等の記事は発見されなかった。 次に、ドイツ・フライブルクにあるドイツ公文書館軍事部門に所蔵されている青島総督府関連文書の調査・資料収集を行った。今回は、総督Truppelおよび von DiederichsのNachlass、Bestand Reichsmarineamtの膠州・青島関係分や軍楽隊関係の文書の一部を検索し、資料収集した。軍楽隊関係では、演奏会のガイドラインや行進曲の指定などの知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
金沢大学図書館所蔵の『Tsingtauer Neueste Nachrichten. 1904~1914』(青島新報)の記事調査は、記載記事が多岐にわたるため、予定より半年分少ない1912年の前半までのデータ入力に終わった。 ドイツ・フライブルクにあるドイツ公文書館軍事部門に所蔵されている青島総督府関連文書の調査・資料収集においては、手書き文書の割合が予想よりも多く、読み取りに時間を要したため、予定した史料をすべて検討することができなかった。特に、軍楽隊への予算増額の事情にかかわる史料の発見には今だ至っていない。また、民政・文化政策に関する史料がまとまって綴られていなかったので、検索に予定以上の時間を要したことも研究遅延の理由である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画通り、金沢大学図書館所蔵の『Tsingtauer Neueste Nachrichten. 1904~1914』の記事を継続して調査する。2016年度にあっては、1912年後半から日本による占領の1914年分までの調査を行う。これによって、同誌掲載の音楽活動関係の記事を網羅的(1904~1914)に把握することとなる。 また、『青島官報』発行以前に官報の代役的な機能を果たしていたとされる『Deutsch-Asiatische Warte(1897-1903)』のマイクロフィルム版を購入し、『青島官報』の発行以前の1897年から1901年までの記事を中心に同趣旨の調査を行う。これによって、『青島新報』及び『青島官報』の記事を含め、租借条約締結以降日本占領まで(1897年から1914年)のドイツ租借地時代の青島の音楽活動の全体像が把握できる予定である。 さらに、京都大学に所蔵されている『Der ostasiatische Lloyd』(1898- )の膠州・青島関係分(Nachrichten aus Kiautschou)を調査し、上海、天津、北京等の他の租界地及び中国主要都市における海軍第3海兵大隊軍楽隊に関する記事を検索する。これらは文化プレゼンスを示す、ドイツの植民地文化政策に基づく活動と思われるからである。 2016年度においても「ドイツ海軍及びドイツ植民地政策・青島総督府関係書籍」及び「ドイツ公文書館軍事部門所蔵青島総督府関連文書」の分析を継続し、ドイツの青島占領政策における文化政策(特に音楽分野)の方向性(模範的植民地」の文化プレゼンスとしての音楽活動)の確認を行う。 これらの調査研究の報告として、研究成果の一部(青島と他の租界地及び中国主要都市における音楽活動:活動の種類、対象、演奏題目、入場料、批評等)を研究発表する。
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