研究課題/領域番号 |
15K12822
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
萱 のり子 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (70314440)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 臨書態度 / 形象 / 和歌 |
研究実績の概要 |
書における「臨書」を多角的に検証する目的をもつ本研究の初年度にあたる27年度は、主として2つの方向(①近現代の作家の臨書態度に関する調査②和歌書きの筆跡における書写的要素と書表現の要素の関連について)から研究を着手した。形として残された筆跡のなかに、書き手の臨書観や表現意図はどのように現れるのか、その根拠をどのように跡付けることができるのかを観察しようとするねらいがある。書活動は、歴史的に「臨書」行為の存続によって受け継がれてきているともいえるため、現段階はその解釈行為の実相を明らかにする方法を探ろうとしている。 美術館・博物館での展示作品を実見する場合と収録図版による作品を扱う場合とでは、「形」から発せられる意味内容が異なってくるため、形と行為との関係を可視化しうる臨書対象を絞り込み、一つのモデルを描く必要がでてきた。 現段階では、国文学・国語学の観点から論じられた文献と古筆学の観点から論じられた文献とを照合させつつ、美的経験としての「形」がもつ意味相を考察できるようにしようと試みている段階である。文学的内容の理解や解釈がどのように書の表現の相に現れるかについて論述された先行研究が乏しく、また古筆を対象とした臨書態度について言及された先行研究も少ないのだが、和歌と書は不即不離で展開してきた領域であるため、この現状は近現代以降の研究分野の分化がもたらしたものではないかと推測される。そのため、この方向からの検証は、「形象」解釈の新しい着眼点に至れるのではないかと予測している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の着眼点や目的はほぼ想定していた通り研究を進めることができているが、行為と形象の間をつなぐ指標を挙げて検証するにはまだ至っていないため。
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今後の研究の推進方策 |
当初は日本における近現代の書活動全般を対象としていたが、和漢の書を同一のレベルで扱うことには無理があるため、当面は「仮名」を対象として進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の後半には、調査資料をもとにした研究成果を公開する予定であったが、「形象」を記述するための指標を見だすところまで進展せず、公開にいたらなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
図版による資料収集と作品の実見とを相互に関連づけられるように計画し、可能な限り指標探索に向けての途中経過についても成果公開できるようにすすめ、その費用に充てたい。
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