研究課題/領域番号 |
15K12822
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
萱 のり子 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (70314440)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 臨書 / 筆跡 / 原本 / 理解 / 表現 |
研究実績の概要 |
本年度の研究は、「臨書」概念が形成される要因とそのプロセスに着目し、臨書行為の観察を行った。前年度の実践研究によって、文字形象の捉え方の原形は、学校教育における影響が強いことをふまえていたため、今年度は引き続き、小・中・高・大・各校種にわたって「臨書」をテーマとした授業研究を行った。この実践研究を柱として、原本理解や「書く」行為の特質等について検討した。この成果は報告書『臨書を基点とした実践的授業研究―批判力を高めるための2つの検討』としてまとめた。 学校教育における実践研究を柱としたことには、文字との関わり方や文字形象の見方の基礎が学校で築かれるという点と、それ以上に学ぶことの原点として「まねぶ」「まねる」行為が存していることによる。作品制作や鑑賞の場における狭義の「臨書」を扱うのではなく、文字を習得することや、文字を書くことのプロセスにおいて「まねび」の要素がどのように関与しているかを見ることによって、学校教育現場での指導者の目線を検討することができた。 特に、本年度の研究テーマとなる一つ目の柱との関連でいうと、現代社会では「臨書」という行為自体が特殊な活動となっている状況をふまえて、歴史的な書の形象理解のために必要な視点が予測できたことが成果といえる。最も根本的なテーマとなるのは、運筆という身体経験を前提としない形象理解のあり方である。書における「臨書」という行為自体がもつ意味がどのように変容しているかを検討することで、「理解する」という行為や「表現する」という行為における感性的なはたらきの重要性が指摘できるところへ向かいたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、2本柱を立てて遂行してきている。1つは、「臨書」概念の検討を書論等の文献資料をもとにして行っていくこと、もう1つは教育現場に現れている「臨書」実践とその理解について具体的に把握することである。近代から現代にいたる「臨書」の諸相を観察して、その連続・非連続の要因を探っていくためである。 後者の実践研究は、計画以上の成果を得たが、前者の進行がやや遅れている。研究年度を一年延長し、その見直しをはかる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
「臨書」概念を検討するための方法としては、書論等の形となって残されている文献資料を検討するだけではなく、作品として遺る形象を通して観察することを想定している。この場合、拓本や印刷本含め、どのような種のものが臨書の原本として取り上げられていたのかを合わせて検討していく必要がある。観察の指標となる観点を整理し、具体的な作品を選定して進めていく必要がある。選定理由が恣意的な理由にならないようにするため、近代の書人の制作論を合わせて読み進めるようにしたい。 また、個別の作品をもとに「行為と形象の間」を考察する際には、記述に使用する用語の検討をあわせて行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、「臨書」をめぐり(1)理念・概念の検討(2)実践検証という二本柱によって進めている。このうち、29年度は後者にウエイトを置く経過となり前者と連動させるところまで進まなかった。研究期間を延長し、30年度は、これまでの実践検証の成果をふまえ、文献資料等の整理を行いながら、総合的な成果発表にあてられるよう計画する。
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