研究課題/領域番号 |
15K12827
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
藤川 哲 山口大学, 人文学部, 教授 (50346540)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 主題分類 / 作品主題 / 主題語 / 画題 / 美術辞典 / 項目見出し |
研究実績の概要 |
本研究は、現代美術作品の主題分類システムの構築を目的としている。その初年度にあたり、先ず『アート・ドキュメンテーション研究』のバックナンバーをすべて所蔵する明治学院大学の図書館を利用させて頂き、同誌の掲載論文、および巻末の関連文献目録を精査・精読した(5月)。同目録を手掛かりに、所属大学附属図書館の文献複写サーヴィス、電子ジャーナル等を利用して、海外文献も含めて主題分類システムに関する最新動向を調査した(6-10月)。アート・ドキュメンテーション学会に入会し、秋季研究会に聴衆として参加、複数の会員より助言を頂いた(11月)。日本語で美術作品について記述する際の「主題語」に関する基礎的調査に焦点を定め、『新潮 世界美術辞典』の項目見出し16,965語をエクセル・ファイルに入力・分類し、その分析結果を論文にまとめた(11-1月)。論文は、『山口大学文学会志』第66巻(2016)、101-120頁に掲載(論文タイトル:『新潮 世界美術辞典』の項目見出しを基にした主題語の抽出と分析)。YUNOCA山口大学学術機関リポジトリを通じて、社会に発信されている。 「現代美術作品主題分類システム」を構築するための基礎的データとして、日本を起点に東洋・西洋に限らず「世界」の美術を対象とした同辞典の項目見出しを全てデジタル・データとして入力し終えたことは、今後のシステム構築を円滑に進める上で意義が大きい。同美術辞典のデジタル・データとしては、NECより1992年と1998年の2回、PC-9800版とWindowsNT4.0, 95, 98版としてCD-ROMが市販された経緯があるが、JIS第3水準以上の漢字については、外字であった。この点でも独自にデータを作成する必要があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は研究動向の概要把握と基礎データの入力を行い、基礎データの入力・分析成果を論文として発表した。概要把握については、挑戦的萌芽という性質に鑑みて、必要かつ重要な手順であったが、当初の想定以上に時間を必要とした。また、作品カードの作成について、フォーマットの検討過程で納得のいくものを案出できず、結果として年度内に着手できなかった(28年度5月現在では、作業効率の高いフォーマットを確立している)。 初年度中に、研究動向の概要把握と基礎データの入力を完了しているため、今後の作業の効率化が図られ、研究計画上の遅れは、十分取り戻せる範囲のものと認識している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の成果を発展させ、現代美術作品に関する主題語を抽出するとともに、階層構造化し、作品カードとの関連づけを行う。 作品カードは、27・28年度調査分と合わせて約800枚を28年度前期中に作成し終える。以上の作業をもとに、28年度後期には、分類システムのβ版を完成させ、同システムの有効性を検証するための研究会を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
作品カードのフォーマットについて納得のいくものを案出できなかったため、カード整理用トレーの購入を見送り、合わせて印刷用のトナー等、物品費に残額が生じた。加えて、研究動向の把握に予想以上に時間がかかったため、分類システムのβ版の構築に至ることができず、研究会開催を見送り、会場借料として予定していた「その他」の項目の使用額が0となった。また、謝金についても、同様の理由で支出しなかった。これらは、次年度以降に繰り越し、より有効に活用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
検討課題であった作品カードのフォーマットについては、3月中に検討を終え、確定した。28年度前期には、27年度に予定していた500枚に、27・28年度調査に基づく追加分を加えて、合計約800枚を作成する。 28年度後期には分類システムβ版を完成させ、同システムの有効性を検証するための研究会を実施する。 28年度中に研究計画の遅れを取り戻し、時間的余裕をもって最終年度を迎えたい。
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