本研究は、現代美術作品の主題による分類システムの構築を目的とした。絵画や彫刻、写真、映像、インスタレーションなど多様な表現手段を用いる現代美術作品の多くが、非言語的な表現であり、主題の同定は分析者の解釈に大きく左右される。そこで、本研究では、国際美術展の図録に掲載されている作品解説のテキスト(日・英)を典拠として、「主題語」を抽出することとした。「主題語」は、作品の主題を端的に表す1語の名詞、または2、3語程度の名詞を連結したものである。 また、類語や関連語を整理するにあたり、ウェブ公開されている国立国会図書館典拠データ検索・提供サービスを活用し、同サービスの米国議会図書館件名標目表(LCSH)へのリンクを参照しながら、英語表記との対応関係や標準的な表記法を踏まえて、語彙の統制を行った。 作品解説テキストの分析においては、作品のテーマ、モチーフ、意味、内容、作者の意図、制作動機など、さまざまな切り口での解説文が、広義の「主題」と関連する。本研究では、こうしたさまざまなレベルにおける作品解説が存在する現状を、ありのままに反映する方針をとり、主題語カードに、上述の国立国会図書館件名標目表(NDLSH)と米国議会図書館件名標目表(LCSH)のIDに加えて、典拠となる作品解説テキストの該当箇所を数行引用することによって、利用者自身が作品と主題語の照応性を吟味できるようにした。 本研究によって、NDLSHやLCSHがカバーしておらず、新たに現代美術の主題語として定義する必要のある主題語を多数確認することができた。これらの主題語カードは、山口大学が運用するサーバー上で公開されている(http://scfca.hmt.yamaguchi-u.ac.jp/)。研究代表者は、今後も国際美術展を継続的に調査するので、さらに事例を追加してシステムの拡充を行う予定である。
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