研究課題/領域番号 |
15K12829
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
関根 浩子 崇城大学, 芸術学部, 教授 (10553589)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 彩色木彫 / ヴァラッロ / ピエモンテ州 / ロンバルディア州 / ルネサンス |
研究実績の概要 |
研究の全体構想は、ヴァラッロのサクロモンテの各礼拝堂内の最初期(15世紀末)から現在に至るまでの彩色彫刻群の全体像と、それらの造形的・技法的特徴や変遷等を明らかにすることで美術史上への正当な位置づけを行うことを目的としているが、本研究は、その全体構想のうち、①として、最初期の彩色木彫群に焦点を当て、それらの誕生の必然性や造形的・技法的特徴等の解明を行うことを目的としている。また②として、ルネサンス以降、彩色彫刻全般が等閑視されるようになった理由や経緯を解明し、そうした評価の妥当性を再検証することで、ヴァラッロの彩色彫刻群の再評価と美術史上への定位を目的としている。 平成27年度は、以上の目的を達成するために、まず①については、彩色木彫調査として2回の現地調査を実施した。第1回現地踏査(8月17日~8月27日)では、ピエモンテ州のヴァラッロやカンペルトーニョ、クァローナ、ロンバルディア州のミラノのスフォルツァ城博物館における調査、写真撮影・資料収集を実施した。また第2回現地踏査(3月17日~3月28日)では、次年度に予定していた調査地を含むロンバルディア州のミラノの諸美術館や教会、パヴィーア、ローディ、ヴェジェーヴァノ、ヴァレーゼ、コモ(大聖堂)、トルノ、モルベーニョ、カスパーノ、アルデンノ、ポンテ・イン・ヴァルテッリーナ、カイオーロ、サロンノにおける調査、写真撮影、資料収集を実施した。②の彩色彫刻に対する美術批評の変遷調査については、①より遅れ気味であるが、購入あるいは借用、あるいは複写可能な範囲で文献の収集、参照を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主要な2つの調査・研究項目である①彩色木彫調査と②彩色彫刻に対する批評の変遷調査のうち、初年度である平成27年度は現地調査に重点を置いて実施したため、①については、以下の通り、当初の計画以上に進展したといえる。しかしその分、②に関する文献収集や参照がやや遅れているほか、作品調書の作成や写真、文献データの入力、整理作業が滞り気味である。とはいえ、次年度の平成28年度に踏査予定であった主要な調査地の多くを既に調査できており、進捗状況としては概ね順調といってよいと思われる。 ①彩色木彫調査・研究 第1回現地踏査地(8月17日~8月27日)は、ヴァラッロのサクロ・モンテ管理事務所、絵画館、図書館/カンペルトーニョの教区教会/慈悲の聖母マリア小聖堂/クァローナの教区教会/ミラノのスフォルツァ城博物館、であった。次いで第2回現地踏査地(3月17日~3月28日)は、ミラノ(ポルディ・ペッツォリ美術館、バガッティ・バルセッキ博物館、大聖堂付属博物館ほか)/パヴィーア(聖ミカエル大聖堂、マラスピーナ絵画館ほか)/ローディ(大聖堂)/ヴェジェーヴァノ(7つの苦しみの教会、市立病院、大聖堂)/ヴァレーゼ(聖ヴィットーレ教会、山の聖母マリア教会、バロッフィオ博物館ほか)/コモ(大聖堂)、トルノ(サン・テクラ教区教会)、モルベーニョ(被昇天巡礼聖堂、聖ヨハネ教区教会)/カスパーノ(聖バルトロメオ教会)/アルデンノ(聖ロレンツォ教区教会)/ポンテ・イン・ヴ ァルテッリーナ(サン・マウリツィオ教区教会)/カイオーロ(殉教者聖ピエトロ小聖堂)/サロンノ(奇跡の聖処女巡礼聖堂ほか)、であった。 ②彩色木彫に対する批評の変遷の調査、研究については、①の作業の合間をぬって可能な限り文献収集と参照を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
2年目に当たる平成28年度も、当初の当該年度の研究実施計画に従って、当該年度に予定してる調査地のうち未踏査の調査地における年2回の①現地踏査による彩色木彫調査、並びに②彩色彫刻に対する批評の変遷調査を実施する予定である。しかし全体の進捗状況によっては2回の現地調査を1回にし、その時間を、遅れている文献収集や閲覧、調書作成や写真、文献等のデータ入力、整理に充てる可能性もある。 平成28年度の①に当たる北イタリア現地(デル・マイーノ兄弟等の彩色木彫所在地)調査は、第1回目がコモ県アルバーテ/クレモナの司教館/レッコ県ベッラーノ/ソンドリオ県ティラーノ等の諸教会や美術館等での作品調査と資料収集、第2回目がトリノ県キヴァッソ、モンカリエリ、トリノ等諸教会や美術館等での作品調査と資料収集を予定している。そしてアルバイトの助力を得ながら、収集した資料や撮影した写真、文献等のデータ入力、整理、調書作成を進めていく。また今年度は、本研究テーマに関する学会発表か研究報告、もしくは論文執筆を実現させたい。 さらに②の彩色彫刻に対する批評の変遷調査については、引き続き美術批評家の著作の収集、参照を進め、関連する記述の洗い出しや洗い出した記述の時系列的整理を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度(2年目)使用額が生じたのは、写真や文献等のデータ入力や整理、調書作成、邦訳入力等のアルバイトをしてもらうための準備が間に合わず、謝金(アルバイト代)を支出できなかったためである。また、当初想定していた調査先への謝礼が、公的機関等の場合、必要ではないケースがあったためである。これらの理由で謝金に未使用額が残った。
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次年度使用額の使用計画 |
初年度の1年間で現地踏査・調査が進み、写真や文献、調査先、協力者等に関する情報が集まりつつあるので、次年度(2年目)は予定通りアルバイトを雇用し、調書作成並びに写真や文献の入力・整理、さらには邦訳入力等に着手することで、初年度未使用の謝金も含め使用する予定である。 また、現地で購入、複写した書籍やコピー等を日本に送るための通信費が予定より多くかかっているため、未使用額を多少通信費として使用したいとも思っている。
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