1.分析用データの整理:(1) 2016年度にデジタル化した,西洋古典修辞学の集大成であるデュマルセの『転義法概論』(1730年)から,映像内容の分析に用いることが可能と思われる「17種の転義法」を抽出して修辞技法オントロジー構築のための基本単位とした。(2) 2008年度から2015年度までのモニター調査によるCM好感度ランキングのデータのうち「好感度の高いCM」57点について,各CMのカット数及び各カットの実時間,セリフやナレーション,また各CMの継続時間中に音楽が含まれている「音楽率」をネットワーク構造で表すためのデータ行列を作成した。(3) 2016年度に,各カットで用いられているサイズ,アングル,カメラワーク等の情報を抽出した『NHK紅白歌合戦』の1960年代の映像について,各カットで実際に旋律に乗せて歌われている歌詞テキストを,旋律の音価と同期させた分析用データを作成した。 2.映像表現における各技法の組み合わせが,通常の映像作品よりも物理的な次元で捉えやすい実験映画ジャンルに焦点を絞り,実験映画作家奥山順市の作品群を対象として,特に撮影技法の特徴についての分析を行った。 3.2の研究で得られた知見を,パリ第8大学・芸術美学・実践・歴史講座と本科研が共催して開催した研究集会「日本における『遂行的』映画」において共同報告「奥山順市の実験映画を巡って」(2018年3月13日,会場:フランス国立文書館)を,研究分担者石井満,研究協力者太田曜と共に行った。 4.上記の研究集会の成果報告をパリ第8大学・芸術美学・実践・歴史講座からフランス語で刊行する予定について,フランス側責任者であるパトリック・ナルダン氏(パリ第8大学・芸術美学・実践・歴史講座)と打ち合わせを行った。
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