研究課題/領域番号 |
15K12833
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
古澤 龍 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 講師 (50648087)
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研究分担者 |
柳川 智之 武蔵野美術大学, 造形学部, 助手 (40715059)
大原 崇嘉 武蔵野美術大学, 造形学部, 助手 (70632553) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヴァルール / 色 / テクスチャ / 視覚表現 / 視覚心理 / 鑑賞空間 / 精神物理学 |
研究実績の概要 |
本研究では、ヴァルールを二次元視覚媒体での画面上の「相対的見えの強さ」とし、ヴァルールの定量化の研究とその研究から可能になる視覚表現研究を実施している。ヴァルールの定量化の研究ではデジタル化したイメージをピクセルごとに色差を元に演算する「潜在ヴァルール」と実際の展示環境、イメージ以外の周囲の色や、テクスチャと照明の関係などを「環境バイアス」とし、統合することでより見えに忠実なヴァルールの定量化を求めるモデルを設計した。 最終年度は、初年度に行った潜在ヴァルールの情報から、別の色彩を持ったイメージへの逆変換も試みた。色彩が変化しても潜在ヴァルールが変換前の情報と一致していれば見え方が保たれるか等、アルゴリズムの妥当性について検証するとともに、この方法による新たな表現へと展開した。その成果は「&(アンパサンド)がカタチをひらくとき」(川崎市市民ミュージアム、2016年8月4日-9月25日)にて展示発表した。 また2017年1月には環境バイアスの要因としてあげられる”照明”がどのようにヴァルールに影響を与えるのか、明るさに応じて平面媒体の「奥行き性」と「質感性」の見えの感覚量を計測する心理実験を19名の被験者に対して行った。結果として照度が明るくなるに応じて質感性は比例して見やすくなる。空間性も比例して見やすくなるが一定の明るさ(実験では15-70lx程度の範囲において)以降は減衰する。また低照度環境(10lx以下)では質感性よりも空間性の方が優位だが空間性が減衰してくる範囲で照度の見やすさが逆転する。これは質感性が強く見えることによって画面の平面としての定位性が強く発生し、画面の奥へ導かれる奥行き性が遮られる為だと分析している。正確な照度の範囲はさらなる検証が必要であるが、今回の実験では、照度に応じた空間性、質感性の見えの推移についての関係の一端を明らかにした。
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