研究課題/領域番号 |
15K12834
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
宮永 美知代 東京藝術大学, 美術学部, 助教 (70200194)
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研究分担者 |
本郷 寛 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (00190265)
楜沢 順 千葉商科大学, 政策情報学部, 教授 (50337713)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 宇宙 / 人体 / 触覚 / 美術 / 無重力 / 衣服 / 四季 / ファッション |
研究実績の概要 |
1.宇宙での生活についての情報収集---JAXAの協力を得て、現状では宇宙飛行士の衣服は地上とほとんど変わらないものを着用しており、長期滞在では服の衛生にとりわけ問題を感じている。また、デザインの問題として無重力では地上では見えないあらゆるものが見えてしまうという問題も明らかになった。 2.宇宙での人体フォルムと動きの研究---宇宙での姿勢(neutral position) は地上とは大きく異なる。宇宙という狭小限定空間での長期滞在では、動作においては筋力を用いた運動の必要性がなくなるため、生体は速やかに環境に適応する。このため骨量、筋量の低下が報告されているが、とりわけ下肢の変化は著しいであろう。地上で宇宙での姿勢への理解を促すために、無重力での中立姿勢に近い姿勢を再現することに意義があると考えられる。宇宙での人体フォルムは下肢が細くなるとともに上半身が相対的に大きくなるなどの変化がある。長期滞在ではより大きな変化がもたらされる。 3.宇宙生活での触覚を補完するファッション---地球上では常にあらゆる所から接触感がもたらされる。立位では足裏から、座位では大腿後面や殿部から、臥位では地上面と接する全てから。無重力ではこれらの入力がことごとく失われる。触覚入力の喪失は地球上で進化してきた人間の心身のバランスにも重大な影響を与える。特に長期滞在においては、この心身の健康とバランスをとるために多様な種類の触覚の補完は欠かせないものであり、快適で心地良い服の素材が重要と考えられた。今回、長い繊維で織られた綿の多様なタオル素材にそれを求めることとした。 4.宇宙での一年---無重力、狭小限定空間での長期滞在では、地上の四季の変化を宇宙船内に持ち込むことに大きな意義があると考えられる。それは春夏秋冬の服の素材の変化が触覚の喜びとつながり、このことを考えてゆく方針が立った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、共同研究者との間で長年温めてきたテーマでもあり、長期宇宙滞在に向けての次年度の展覧会や報告書の作成に向けて、準備を行ってきている。
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今後の研究の推進方策 |
1.宇宙と人体の展覧会の開催---東京藝術大学美術学部陳列館において2016年9月14日から23日までの10日間、タイトルが『宇宙と美術と人体と』という展覧会を行うこととなっている。ここで本研究での成果報告を場所を設けて行う。以下2から5は展覧会に展示する作品である。宇宙への理解を促すための体感的な展示となる予定である。 2.映像メディアによる宇宙環境の地上での再現研究---"浮遊感”をキーワードに、映像を基にサンプリングしたデータから、地上にいながらにして宇宙環境を彷彿とさせるような映像空間を制作する。 3.宇宙での姿勢---無重力での中立姿勢に極めて近い姿勢が再現できる椅子のデザインについて考えていく。 4.宇宙での人体---宇宙での身体とはどのようなものか、地上ではなく自ら選んだ環境で人体はどのように変化するのか。言わば未来の人体ともいえる対照のイメージについて、造形表現し、提示する。 5.宇宙生活での触覚を補完するファッション---特無重力、狭小限定空間での長期滞在において、触覚に快適で心地良い多様な素材を用い、四季の変化を宇宙船内でのくつろぎ着のファッションとして提案する。地上の四季を服の素材を変えることで変化させ、触覚に多様に訴えかけるものによる喜びを感じるくつろぎ着を提案する。 6.成果報告書の作成---宇宙と芸術の展覧会の内容を総括してまとめる。宇宙生活を地上の人々が学び、宇宙について考え、ひいては地上に生きる人々が各々の生活を振り返ることのできヴィジュアルなものを考えたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に「宇宙と美術と人体と」の展覧会開催が決定し、本研究の成果物の製作費、運営費、報告書作成費が必要となっており、極力展覧会に経費を後ろに倒して使用する必要が出てきたため。
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次年度使用額の使用計画 |
展覧会での本研究の報告として、無重力での中立姿勢を地上で再現できる椅子の作成、宇宙での人体の等身大模型の制作、「浮遊感」をキーワードに、映像をもとにサンプリングしたデータから、宇宙環境を彷彿とさせる映像の作成等、出品物製作費、運営費、報告書作成費が必要であるため。
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