研究課題/領域番号 |
15K12837
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
三船 温尚 富山大学, 芸術文化学部, 教授 (20181969)
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研究分担者 |
三宮 千佳 富山大学, 芸術文化学部, 講師 (10454125)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 青銅製仏像 / 切削 / 研磨 / 鏨 / 砥石 / 切削研磨程度 / 造形感覚 |
研究実績の概要 |
これまでの金銅仏の技術研究は、鋳造技術が主で、次に施文技術であった。本研究では、凹凸のある鋳肌面を鋳造後に切削研磨する「仕上げ」技術とその工人の造形感覚に着目して研究するものである。 奈良時代以前の金銅仏の切削研磨仕上げの程度と鋳造技法を研究するために、法隆寺夢違観音菩薩立像を調査し、論文発表した。面と稜線の乱れの数と大きさを判定基準に用い、仕上げ程度の数値化をおこなった。正面、側面、背面を比較すると、最も仕上げ程度が高いのは正面で、次に側面、さらに背面の順に低くなる。拝観者の目に触れにくい部分は低くなり、最も目に触れる機会が少ない裾裏面は、極めて低い程度の仕上げになっている。視線が及ぶ回数の多い面部や手は程度が高く、これらから離れる部分は程度が低くなる。100を最高程度とすると、正面は85~100、側面は75~100、背面は75~100、裾裏面は60と低い。側面、背面の100は頭部・面部、手であり、これらを除くと、側面の最高95、背面は90となる。夢違観音菩薩立像の鋳造方法が鋳型分割法か、非分割法か断定できる鋳造痕跡は見つけられなかった。 法隆寺伝橘夫人念持仏、泉屋博古館蔵太和22年銘金銅仏などを目視調査、3Dスキャン計測し、論文の執筆を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
切削研磨程度と、評価方法が法隆寺夢違観音菩薩立像と、法隆寺伝橘夫人念持仏の調査と論文で確立しつつあることが1つの理由である。 当初、計測が不可能かと思われた光沢のある金銅仏(泉屋博古館蔵太和22年銘金銅仏)の3D計測が順調で、計測データからコンピュータ上で断面図作成や、形状比較が進み、切削研磨と、鋳造技術に関して、当時の工人の造形方法と造形感覚が、徐々に解明していることが2つ目の理由である。 ①薬師寺聖観音菩薩立像、②夢違観音菩薩立像、③法隆寺伝橘夫人念持仏、④太和22年銘金銅仏の目視調査、3D計測調査を経て、論文発表(①、②)と論文執筆中(③、④)で、次の調査金銅仏の選定が済み、所蔵博物館に調査申請を済ませた。 これらが判定理由である。
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今後の研究の推進方策 |
既に、次の調査金銅仏を選定し、調査申請をしている。この調査を経て、これまでの切削研磨程度調査件数を増やすことが、本研究の深化につながる。泉屋博古館蔵の2体の金銅仏の3Dデータを、加工して、様々な検証を進めている。さらに3Dスキャン調査の金銅仏を増やし、たとえば全ての調査金銅仏の断面図を比較し、造形、仕上げ、変遷を三次元データ検証する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
1体の泉屋博古館蔵金銅仏の3Dスキャンの必要性について、共同研究者等と打ち合わせし、実施できなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の、東京国立博物館法隆寺宝物館蔵の法隆寺四十八体仏の3D計測の経費(業者委託)に充てる予定である。
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