本研究は、冷戦後のドイツでナチズム・戦争・ホロコーストのトラウマ的な過去がいかに想起されているかを調べた。特に公共空間における歴史表象のあり方に着目し、主に1990年代以降のベルリンに誕生したモニュメント、ミュージアム、パブリック・アートを分析した。比較のために、日本における戦争の記憶を象徴的に体現する諸々の「想起の場」も調べた。再統一後のドイツが推進する「想起の文化」では、対外的には欧州統合の枠内で民主主義国としての自国の政治的輪郭を明確にするために、対内的には国民統合を強化するために、ナチズムとホロコーストの記憶が、対照的否定像として共同想起の中核に位置づけられていることが明らかになった。
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