研究実績の概要 |
本研究の目的は、中国インディペンデント・ドキュメンタリーを対象に、「カルチュラル・アサイラム」という新たな枠組みを導入することによって、現代中国の非公的文化生産のダイナミクスを解明することである。研究期間全体を通し、中国インディペンデント・ドキュメンタリーというアサイラムの誕生から衰微までの包括的な歴史像を相当程度、明確化することができた。とりわけ2018年度は、電影産業促進法の施行(2017年3月)後の当該領域の収縮と移行状況について以下の調査を行い、期間全体を通した成果の発表と研究交流を重点的に進めた。 (調査)中国、香港、米国において、当該領域の収縮と他領域・他地域への移行の実態を調査し、中国美術学院、上海映画祭、平遥国際電影展、UCLA、CalArts、ミシガン大学の研究者・実務家らと研究交流を推進した。 (成果発表)Documentary Film, Regional, Theoretical and Political Parameters(香港)、西湖国際紀録片大会(杭州)、内蒙古草原電影工作坊(フフホト)、表象文化論学会(山形)、日本映像学会・アジア映画研究会(東京)など国内外の学会・研究集会において、これまでの研究成果を発表し、異なる専門領域の研究者・実務家から有益なフィードバックを得た。とりわけ、各国の主要なドキュメンタリー研究者が参加したDocumentary Film, Reginal, Theoretical and Political Parametersでは、Zhang Zhen氏(NYU)ら複数の専門家から、申請者の「カルチュラル・アサイラム」という概念に高い関心が寄せられた。また、Journal of Chinese Cinemas の字幕特集号に単著論文を、『neoneo』ダイレクトシネマ特集号に単著論文と鼎談(秋山、土屋、中山)を寄稿した。
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