日本の歴史的典籍の画像データベースが飛躍的に整備されていく中で、海外の日本研究者や理系の研究者が、画像データベースを有効に活用できるように、古典籍解読にかかせないくずし字解読を効果的に学習する教育プログラムの開発を目的とした。 その具体的な方法として、くずし字の学習を支援するモバイルアプリの開発を行なった。そのために、予めテスターを募集し、彼らの意見を元に、くずし字学習を支援するための適切な解説、アプリ掲載の変体仮名・くずし字の収集、テストを含む効果的な学習システム、くずし字学習コミュニティの創生のためのSNS的機能について、検討を重ね、2016年2月に、無料アプリ"KuLA"としてリリース、2017年3月末で6万ダウンロードを超え、高い評価を受けた。最終年度において、アプリは改良を重ねて、2016年12月に、バージョンアップ版がリリースされ、英語学習機能などが追加された。 また、2016年2月には、日本の歴史的典籍を研究し、教育素材として利用している研究者を、イギリス・ドイツ・アメリカ・韓国などから招き、その教育実践について報告・討議する国際シンポジウム「読みたい!日本の古典籍―歴史的典籍の画像データベース構築とくずし字教育の現状と展望」を大阪大学で開催し、125名の参加を得た。 2017年2月には、『アプリで学ぶくずし字―くずし字学習支援アプリKuLAの使い方』(笠間書院)を刊行、アプリの使い方と国際シンポジウムの内容の簡単な紹介などを掲載し、広く一般に周知した。同年3月には、UCLAにマイケルエメリック教授をたずね、歴史的画像データベースの研究・教育への活用と「変体仮名あぷり」の開発およびこれからの展望についてインタビューを実施した。
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