1591年に日本で刊行された『サントスのご作業』は、ヨーロッパの聖人伝を翻訳したものである。その翻訳に際しては、日本古典文学で使用されている古語や仏教語が使用されており、宣教師たちが、日本語学習や文化理解にあたり、どのような文献を参照していたかを知る大きな材料となる。本研究ではこの翻訳状況の精査を基軸として、日本古典文学がキリシタン文学成立に及ぼした影響を考察した。同時に、当時の宣教師たちの実態を文献講読以外から解明するため、マカオ、ポルトガルへの海外調査や天草、長崎等での実地踏査を行った。言葉の問題と当時の人々の精神性の両面から、殉教の書である『サントスのご作業』を考察することが出来た。
|