もともと本研究は、19世紀初頭から中葉にかけての「大学小説」(college novel) をアメリカ感傷主義の文脈から解き明かすことを目的としていた。しかし感傷小説の研究史を紐解いてみると、同分野の最近の研究がパイオニアたちの持っていた切迫感を失っていること、そして新たな研究領域を立ち上げる際には、現実社会の問題を当事者として引き受け、現実の変革を目指す意志が欠かせないことが分かった。よって、21世紀日本で切迫性をもつ「大学とは何か」、という問いに応答する形での大学小説研究の立ち上げへと方針転換した。最終年度に、19世紀前半の諸作品が大学の有用性の議論にどのように応答しているかを考察した。
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