研究課題/領域番号 |
15K12863
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
宇佐見 森吉 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (20203507)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ロシア / 文化研究 / 文化財 / 美術館 / ロシア正教会 / 展示 / 修復 |
研究実績の概要 |
本件研究はソビエト政権樹立期の文化財保護について、①文化財の蒐集、②文化財の調査・研究、③文化財の修復保存、④文化財の展示の四つの観点から事例調査を行なうことを構想している。 2年目の本年度(平成28年度)には、前年度にロシア国内で収集した資料や日本国内であらたに入手した資料の内容を調査したほか、引き続き関連資料の収集を行なった。 ①「文化財の蒐集」については、前年度に引き続き、ソビエト政権成立後に整備される美術館の所蔵物の中核となる個人コレクションの来歴、著名な収集家の業績等に関して捕捉的な調査を行なった。今年度はとりわけ、20世紀初頭に登場するオストロウーホフらの聖像収集家に注目し、関連資料を調査した。 ②「文化財の調査・研究」③「文化財の修復保存」についても、20世紀初頭のロシア社会で脚光を浴びた古聖像の「発見」期に活性化した古美術研究の文脈、ルブリョフをはじめとする著名な聖像の修復事業にについて資料を点検した。 ④「文化財の展示」については古聖像の「発見」期の頂点を飾るロマノフ朝三百年祭記念古聖像展や、アヴァンギャルド美術家らによるカウンター活動としてのルボーク展など、1910年代の代表的な展覧会について検討を行なったほか、ソビエト政権成立後に古美術の修復成果を展示した修復美術展などについても事例調査を行なった。また、閉鎖された修道院の博物館への転換、前衛美術科による絵画文化館の開設など、革命後に開設された博物館・美術館による展示のありかたについても調査を行なった。 これら四つの観点から浮かび上がってくるものは、ソビエト社会にとって博物館のあるべき姿はいかなるものなのかという問いである。ソビエト政権樹立期に当事者たちはこの問をどのようなかたちで考えていたのか。その点について今後さらに考察を続けていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的はソビエト政権樹立期の文化財保護について、文化財の蒐集、文化財の調査、文化財の修復保存、文化財の展示の四つの観点から事例調査を行なうことにある。 初年度に引き続き、今年度に計画していた事例調査については、一部不足はあるものの、当初の目標をほぼ達成しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、これまでに収集した資料の検討作業を引き続き行ない、年度の後半にはとりまとめを行なう。
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