日本における従来の中国現代文学研究は、通俗文学を無視してきた。古典文学研究における通俗文学研究が、一定の量と高い水準を誇るのとは対照的である。本研究は中国現代文学史上、読者に圧倒的人気を誇り、刊行作品がベストセラーとなった「通俗作家」であるXu Xu(徐ク1908-1980)とWumingshi(無名氏1917-2002)に光を当て、彼らの小説を通じて、中国文学における「通俗性」および「非政治性」の検証を目的とした。その結果、社会主義中国が民衆を主役に据えながらも、民衆受けのするものを排してきた構造が析出され、徐ク・無名氏の活躍が主に1940年代であったことを受け、民衆と戦争の関係も考察した。
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