研究課題/領域番号 |
15K12880
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
窪田 三喜夫 成城大学, 文芸学部, 教授 (60259182)
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研究分担者 |
篠塚 勝正 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 非常勤講師 (40528775) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 運動機能 / 記憶 / エピソード記憶 / 言語習得 / 非単語 |
研究実績の概要 |
近年、重要視されるようになってきた運動が記憶に良い影響を与えるという観点から、運動機能が外国語習得へ及ぼす影響を実証的に研究した。weight lifting が実際に記憶を促進させたという先行研究 (Weinberg et al.2014) に基づき、本研究では、機械的記憶とエピソード記憶の2タイプの課題において、step運動とsquat運動をする実験群と、運動をしない統制群に分けた。機械的記憶では数字を6つ単純に記憶し、図形と非単語の関連も機械的に記憶した。一方、エピソード記憶では、1段落の日本語ストーリーと1段落の英語ストーリーを覚える課題を与えた。運動前後で同様の課題pre-taskとpost-taskを与え、それぞれpre-test とpost-test をした。運動実験群は、心拍数を100-110回/秒にあげ、有酸素運動を行った。機械的記憶では、暗記した数字と非単語を書き、エピソード記憶では記憶したストーリーに含まれていたキーワードを記入させた。 実験の結果、非運動群に比べ運動実験群では、エピソード記憶に関しpre-test と比べpost-testで単語記憶量が増加した。一方、機械的な記憶である数字と非単語の単純暗記では、正しく答えた記憶量は増加しなかった。つまり、ストーリ性のある、意味や文脈のある、1つのストーリーの中で関連した情報が組み込ませている内容を記憶するには、有酸素運動が有効であることが判明した。この結果は伝統的な授業形態である1時間中ずっと座って学習する方式に警鐘をならすものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、言語記憶課題において2種類を準備し、機械的な単純記憶タイプと内容ストーリーのあるエピソード記憶の両方の課題とそのテストを行うことができた。また、運動実験の内容に関し、激しくなく軽くなく中庸な運動負荷を与えるために、step運動とsquat運動の2タイプに決定した。いずれも、100-110回/秒の心拍数に上昇させることに主眼を置いた。さらに、実験前後に2種類のタスクとテストを設定し、本研究の実験計画が滞りなく進んだ。以上の理由で、本研究は、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
言語記憶課題における運動実験群の被験者人数を増加することにより、さらに信頼性のある結果を導く。 「机上の言語学習、暗記の強要」という従来型の教育アプローチではない、体の動きとgesture が言語習得に有効であり、長期的記憶に連結するということを明らかにするために、今後はgestureをする実験群とgestureをしない統制群にわけ、新しい未知語を記憶する際に、どちらが単語記憶の固定化が促進されるのかを脳実験により探る。また、言語記憶における運動の効果度と言語記憶時のgestureの効果度を比較しながら、「体で言語を身につける」というHarold E. PalmerやJames J. Asherの教授法の原点に戻る実験を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は、ほぼ予定通り使用した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、運動機能の負荷レベルを精密に計測して、言語記憶と運動の関連性をさぐっていく。未使用額の使用内容は、運動機能レベルを測定する心拍計、速度計、ハンドグリップ、回数記録タイマーを購入費用の一部にあてる予定である。
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