研究課題/領域番号 |
15K12881
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
杉本 巧 広島国際大学, 工学部, 准教授 (10335713)
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研究分担者 |
串田 秀也 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70214947)
鍋島 弘治朗 関西大学, 文学部, 教授 (90340645)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | メタファー / 会話 / 相互行為 / 言語的資源 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、録画・録音装置を用いて、自然会話のデータを収集し、部分的に文字化した資料を作成した。そのデータに加え、すでに公開されいてるコーパス(宇佐美まゆみ監修(2011)『BTSJによる日本語話し言葉コーパス(トランスクリプト・音声)2011 年版』、『日本語話し言葉コーパス( Corpus of Spontaneous Japanese : CSJ ) 』)を入手し、分析対象となりうるメタファー表現を抽出した。 2015年10月17日のミーティングにおいて、上記の抽出したメタファー表現、特に詳細化や拡張が見られる例を観察し、研究グループ全体での方向性、役割分担を確認した。 2015年12月12日のミーティングにおいて、メタファーの認定・分類方法について、海外で広く使用されている「MIP (Metaphor Identification Procedure)」と「MIPVU」の日本語会話への適用を検討した。その検討成果は、研究分担者鍋島弘治朗教授と研究協力者中野阿佐子氏が、「MIP―理想のメタファー認定手順を求めて―」というタイトルで関西大学の紀要論文として発表した。同日ミーティングには、研究協力者としてイリノイ大学の林誠准教授を招へいし、会話分析の観点から研究グループ全体で収録データを精緻に観察し、会話のメタファー表現でどのような点に注目していくか検討した。 研究分担者串田秀也教授と、林誠准教授は、2016年1月14日にミーティングを行い、会話のメタファー表現に伴う「こう」という形式に着目し、そのメタファー表現以外との共起特性を踏まえて、データを検討していくことを確認した。 以上の成果を踏まえ、研究代表者は2016年3月16日の日本語用論学会メタファー研究会において、会話をデータとしたメタファー研究の意義について発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まだ十分な数ではないが、自然会話のデータを収集し、既存のコーパスの用例も抽出することで、会話でのメタファー表現の出現傾向を把握することができた。また、そのデータの検討により、今後の収集方法やメタファー表現の認定方法を検討することができた。そして、会話分析の観点からも精緻な分析を行い、今後の研究期間において焦点化していく点について確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのデータから得た傾向をもとに、さらに十分な量のデータを収集し、分析用資料とする。さらに、メタファーの認定手順を確定する。その手順をもとに抽出したメタファー表現について、それがどのような言語的資源として相互行為に利用されているか、認知メタファー理論の観点から、メタファーの「詳細化」や「拡張」といった変化がどのように起こっているかを分析していく。 また特に会話分析の観点からは、「こう」に後続するメタファー表現に注目して、「こう」はメタファーを用いる必要のある状況への何らかの対処になっていると考え、そうした状況とはどのような状況なのかを解明していく。同時に、「こう」に後続する形式について、同じ状況に対処するためにメタファーと他の言語的資源とがどのように使い分けられているのかを考えていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
未発刊等により、当初の予定より購入図書の冊数及び単価が少なかったこと、海外の研究協力者の招へい旅費や大規模コーパスの購入、高性能な音声録音機器の購入費用に充てるため、購入予定であったノートパソコンを購入しなかったことが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
新たに発刊される図書の追加購入、当初想定していなかったミーティング会場の借り上げ費用、必要に応じて、収録したデータの文字起こしを業者等に依頼するための費用に充てる。
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