今年度は、2本の英語論文を発表した。1本は、「意識と言語処理」に関わる研究であり、2本目は、「実行系予測機能と言語処理」の研究である。意識化、ならびに予測は、認知的抑制機能と関連があり、衝動性行動の抑制のために重要な機能である。1つ目の研究により、言語の意味処理が意識的に行われると、意味処理の脳活動がすぐに消失せずに長く継続し、言語処理のロバスト性を生むことが分かった。第二研究では、言語処理は、十分な情報が得られなくても、先読み的な予測処理が働き、あいまいな情報が確定するまで持続することが明らかになった。これらの2本の研究成果から、意識化、ならびに予測処理は、後期の持続的脳活動にともに関わることがわかり、衝動性抑制のためにどのような言語処理に焦点を当てればいいかが理解できた。さらに、今年度は、新たに実験を行い、後期の言語脳電位活動は、特に、内的リズムと関係があり、後期脳活動が増強されると内的リズムがゆるやかになり、衝動性が低下することが示唆され、現在、研究成果を論文にまとめている段階である。以上、2年間にわたる本研究プロジェクトから、衝動性を抑制するためには、「意識化、ならびに予測処理を促進することにより、後期言語脳活動を強め、内的リズムを緩やかにする」ことが重要であると結論できる。
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