研究課題/領域番号 |
15K12890
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研究機関 | 札幌大学 |
研究代表者 |
時崎 久夫 札幌大学, 地域共創学群, 教授 (20211394)
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研究分担者 |
宮下 治政 鶴見大学, 文学部, 准教授 (30386908)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 言語学 / 英語学 / 英語史 / コーパス / 音韻論 / 統語論 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、日本英語学会第 34 回大会で、研究発表「Ancrene Wisseにおける本動詞と目的語の 相対的語順と借入語」を行った。その内容を JELS 34 に論文「Ancrene Wisseにおける本動詞と目的語の 相対的語順と借入語」として発表した。 ミニマリスト・プログラムでは、形態統語部門は線形順序(語順)に関与せず、音韻部門がこれを決定するとされている。これを受けて、Tokizaki (2011,2013, 2016)は、通言語的事実に基づいて、ある言語における主要部(H)と補部(C)の相対 的語順は韻律上の要因によって決定されるという理論を提案している。 今年度は、この理論を支持する証拠を、通時的観点から提示した。初期中英語の文献である Ancrene Wisse (AW)では、古フランス語 (OF) (もしくはアングロ・ノルマン語 (AN))からの借入語が目的語として現れる場合、本動詞・目的語(VO)語順の頻度が 高く、目的語・本動詞(OV)語順の頻度が低いことを示した。これは、次のようにまとめられる。ME の強勢体系は、OF からの借入語によって、純粋なゲルマン語型のものではなくなった。そのような状況のもとで、主に語彙のレベルでOFの影響を受けた AWにおけるVとOF借入語を含むOの相対的語順を調査した結果、OF 借入語を目的語として含む OV 語順よりも、OF 借入語を 目的語として含む VO 語順の方が割合が高く、OF借入語をOとして含むOV語順の例は、実際には例外として扱うことができることが分かった。したがって、英語史において、 OE で基本語順であった OV 語順から ME で 急激に発達した VO 語順への推移は、OF からの借入語を介した語強勢の体系の変化によって引き起こされたと結論づけることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、日本英語学会第 34 回大会で、研究発表「Ancrene Wisseにおける本動詞と目的語の 相対的語順と借入語」を行った。その内容を JELS 34 に論文として発表した。また、平成29年7月にトゥール(フランス)で開かれる学会 The international Biennial Conference on the Diachrony of English (CBDA-5) で研究発表 Word Order Change, Stress Shift and Old French Loanwords in Middle English を行うことが確定している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年7月にトゥール(フランス)で開かれる学会 The international Biennial Conference on the Diachrony of English (CBDA-5) で研究発表 Word Order Change, Stress Shift and Old French Loanwords in Middle English を行い、フィードバックを得て、研究を推進する。年度内にもう1件の研究発表を目指し、論文を執筆、投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外学会発表を次年度に予定しているので、旅費分を次年度使用としたい。
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次年度使用額の使用計画 |
7月のフランスでの学会(決定済み)あるいはそれ以降の海外発表などで使用する。
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