研究課題/領域番号 |
15K12911
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
横川 博一 神戸大学, 大学教育推進機構, 教授 (50340427)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 文構造 / 親密度 / 動詞の項構造 / 英語運用力 / 文理解 |
研究実績の概要 |
本研究は,日本人英語学習者を対象として,英語の文構造に対する親密度(familiarity)データベースを構築しようとするものである。基本的な文構造の学習を一通り終えた大学生を対象として,(1)理解(文構造親密度7段階評定,文構造適格性判断課題など),(2)産出(絵描写による文構造導出課題など)の両面からデータを収集し,日本人英語学習者の文構造親密度データベースを構築する。このデータベースは,第二言語の獲得・処理・学習に関するメカニズムの解明をめざす様々な言語実験をはじめ,第二言語の教育・研究の有益な指標となるものであり,第二言語習得研究の進展に大きく貢献するものである。 平成29年度は、平成28年度に行った、(1)日本人英語学習者の文構造親密度に関する本調査のための第2次パイロット調査の分析結果、(2)文構造親密度データの妥当性を検証するための応用研究として、文構造親密度が文理解プロセスに及ぼす影響について調査した結果を発表した[Yokokawa et al, 2017; Hashimoto et al., 2017, 2018〕。 また、(3)文構造親密度データの妥当性を検証するための応用研究として、日本人英語学習者の文産出における文構造親密度の影響を絵描写課題を用いて、産出傾向の分析を行った[兵藤・横川, 2018発表予定]。その結果,口頭ならびに筆記産出において,文構造親密度と二重目的語構文および与格構文の産出割合の間には中程度以上の相関があり,親密度の高い文構造の産出割合が高かったことから,文構造親密度が日本人英語学習者の文産出に影響する可能性があることを示した。また,筆記産出では口頭産出と比較してより完全な文で産出する傾向が見られたことから,産出モダリティによって産出される文構造に違いがあることも示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では中規模の文構造親密度パイロットデータ(1年目)に基づき、言語処理実験によるその妥当性の検証を経て(2年目)、大規模データ収集を行う計画であった(3年目)。しかし、検証実験により絶対的親密度に加えて相対的親密度が関与するなどの新たな発見があったため、有用性・信頼性を高めるため、追加実験及びデータ収集方法の再検討が必要となった。それに伴い学会発表、論文投稿にも研究期間の延長が必要となった。 研究期間を1年間延長することとなったが、2度にわたるパイロット研究の成果を踏まえ、妥当性・信頼性のより高い本調査の実施が可能になったこと、また、文構造親密度データの妥当性検証のためのの実験・調査を前倒しで実施した。以上のことから,本研究課題はおおむね順調に進展しているものと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,最終年度にあたり,以下の調査研究を中心に実施する。 (1)文構造親密度データの収集:調査対象とする動詞を選定し,語彙情報を確定したのち刺激文を作成し,文構造親密度のパイロット調査を経て,本調査を行う。 (2)文構造親密度データの分析・考察:本調査の結果に基づき,親密度による動詞・文構造の特徴分析,同一動詞内における項構造による親密度の違いなどの視点から分析・考察を行う。 (3)文構造親密度データの応用研究:データベースの妥当性の検証および本データベースの応用可能性について行った実証研究について、研究発表を行うなど、公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では中規模の文構造親密度パイロットデータ(1年目)に基づき、言語処理実験によるその妥当性の検証を経て(2年目)、大規模データ収集を行う計画であった(3年目)。しかし、検証実験により絶対的親密度に加えて相対的親密度が関与するなどの新たな発見があったため、有用性・信頼性を高めるため、追加実験及びデータ収集方法の再検討が必要となった。それに伴い、学会発表、論文投稿にも研究期間の延長が必要となった。 助成金は、本調査用紙の印刷・製本、調査用紙発送、データ入力作業協力、報告書などに使用する予定である。
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