研究課題/領域番号 |
15K12925
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研究機関 | 安田女子大学 |
研究代表者 |
山川 健一 安田女子大学, 文学部, 准教授 (00279077)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 留学 / 留学の効果 / 留学の評価 / ポートフォリオ / アンケート / 質的・量的分析 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度留学した学生からeポートフォリオを用いて収集した留学中の記録を整理して、文字データとして整理した。次に、1)学生は留学中に何を経験したのか、2)2つの留学先で何か違いはみられるのか、3)時間とともに学生の経験は変化していくのか、について量的・質的に分析した。量的分析には、KH Coderというデータマイニングのためのソフトを使用して分析した。また、同時に質的解釈も行った。その結果、1)については、学生の記述は、「授業・クラスメイト」「言語」「ホストファミリー」「振り返り」の4つの分野について主に記述されていることが分かった。2)と3)については、2つの異なるキャンパスでは、異なる記述がされていることが量的に示された。この分析の結果については、12月1日~3日に、シンガポール国立大学で開催された The Seventh CLS International Conference CLaSIC 2016 (於:シンガポール国立大学)で口頭発表を行った。 加えて、過去4年分の本学の研究対象留学プログラムの学生アンケートの分析を行った。この4年間では本学の当該留学プログラムには大きな変化が加えられたので、1)4年間の変化、2)異なるキャンパスでの違い、3)学生は何を学んだか、4)学生はどのような問題を抱えていたか、5)大学としての今後の課題、についてプログラム評価の観点から分析を行った。その結果、1)学生の英語力の伸長の領域、2)ホームステイの形態や場所は、ホームステイの満足度と関係していないこと、3)留学生との混合授業の重要性、4)学生の振り返りが抽象的で浅い面があることなどが指摘された。この分析の結果については、3月19日~20日に、京都大学で開催された第23回大学教育研究フォーラムで口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は前年度の遅れを取り戻すための作業に時間を要し、今年度予定の作業に少し遅れが生じた。また、本学で新たなプロジェクトが今年度立ち上がり、その主担当にも任命されたのでそれも影響している。加えて、本年度はデータ収集に自発的に協力してくれた学生の数が昨年度よりも少なくなったことも原因に挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は最終年度であるので、残った課題について、重要度に基づいた優先順位を付けて取り組んでいく。具体的には、過去2年間で実施できなかった英語の口頭能力の測定について、テストの選定と受検者の選定を迅速に行う。 また、学生の内的変容について、これまではeポートフォリオの記述に基づいた量的分析を行ってきたが、異文化間能力や言語不安や動機づけ等の他の側面についての尺度も用いて留学前後に実施する予定である。 また、2年前に留学した学生を対象に収集したインタビューデータについても、文字起こしと質的分析を行いつつ同時に、昨年度に留学した学生についても引き続きインタビューデータの収集を行う。必要があれば外部業者を利用して文字起こしを行う。これらのインタビューデータの蓄積によって、個別のケーススタディから、何らかの一般化に迫るようにデータを増やしていく予定である。 これらのデータについての分析結果については、8月17日~18日に韓国ソウルで開催予定のPan-Pacific Association of Applied Linguistics (PAAL)、3月24日~27日にイリノイ州シカゴで開催予定のThe American Association for Applied Linguistics (AAAL) 2018 、3月20日~21日に京都大学で開催予定の第24回大学教育研究フォーラム等で発表する計画である。 加えて、昨年度発表した2件の学会発表と、今年度発表する研究内容については、論文化して投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
上記の「現在までの進捗状況」の欄で述べたように、研究の時間的不足から全体的に少し遅れが生じている。具体的には、インタビューデータの収集量も回数もまだ十分でないため、インタビュー参加学生への謝金や文字起こしのための費用が繰り越しとなる。また、データ蓄積ならびに統計分析のために購入予定であるノートパソコンも、購入のタイミングが年度末ぎりぎりとなったため、平成29年度に繰り越すこととした。また、学生の英語力の音声面を測定するテストや、学生の内面の変化を測定する尺度等を用いた調査を実施することができなかったので、そのための費用が繰り越しとなる。また、昨年度の学会で発表した研究の英語での論文化の際の英文校正の費用等も繰り越しとなる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、前年度保留にしていたデータ保存用ならびに統計ソフトを用いたデータ分析用の軽量のノートパソコンを購入予定である。また、今年度留学する学生の英語力の音声面に関する変容を測定するために希望者を募り、TOEIC SWと発音テストを行う。そのためのテスト受検費用を要する。また、2年前と昨年度に留学した学生に対する継続ならびに新規インタビューに対する謝金ならびに、データの文字起こしのための費用も必要となる。また、これらの分析結果を発表するための国内外の関連学会への参加費用が必要となる。加えて、昨年度と今年度の学会で発表した、または、する予定の内容も英語で論文化し、その英文校正のための費用も必要となる。
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