本研究も最終年に入り、CLIL授業実施のためのシステム構築を行った。具体的には、シラバスや教材などを中心としたデータベースづくり、またデータベースを使用するためのマニュアルなどを作成した。教材作成の一環として、工学授業英語コーパスの作成を行った。コーパスの作成については、急遽必要性を覚えて行ったため、専門語彙と一般語彙の両者をバランスよく掲載する英語の専門科目教科書を資料として行ったが、結果としては、より充実したコーパスが必要であることが分かり、教科書に加えて、多岐に渡る言語資料を用いたコーパスの作成を行っている。 当該年度後半、高専の専攻科生対象科目で作成したシラバス及び教材を使って授業を実施し、学生、専門科目教師、英語教師にシラバスや教材の適性を評価してもらった。加えて、国内外のCLIL学会、また工学教育学会においても、上記授業の実施報告や教材の紹介などを行い、より専門的な立場からシラバスや教材の適性を検討してもらった。また、データベース作りと並行して、教員向け講演会、研修を行い、CLIL理論の紹介や実際のCLIL指導法などを紹介した。 本プロジェクトを通じて、バイリンガル及び複言語教育に関わる理論的研究課題も与えられた。特に、母語と第二言語の併用が学習者の内容理解に与える影響について、先行研究とこれまで行ってきたパイロット授業の結果をもとに分析を行った。結果としては、母語一言語に加えて、第二言語を使用することにより、学習者の科目内容理解が深化する傾向があることが分かった。本結果は専門科目を母語と外国語で学ぶ際のシナジー効果、つまり二つの言語で内容を学ぶことにより、外国語習得だけではなく、専門内容も深く理解することができる可能性を示唆する。これは今後高専におけるCLIL授業実施の積極的理由となるものであるので、更なる研究を行っている。
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