研究課題/領域番号 |
15K12932
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
永原 陽子 京都大学, 文学研究科, 教授 (90172551)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 近代ピアノ / 象牙 / 植民地貿易 / アフリカ |
研究実績の概要 |
近代ピアノを「マテリアルヒストリー」という観点から分析する本研究は、①近代ピアノの生産・製造の側面、②近代ピアノの流通・販売・普及・使用の側面、の二つの面をとりあげ、それらを欧米諸国と植民地地域との関係の中で把握することを目的としている。 2015年度には、①にかんして、近代ピアノ製造に不可欠な材料である象牙に着目し、その由来を明らかにするための作業を行った。主として利用したのはアフリカからの象牙輸入において中心的な役割を果たしたイギリスの貿易統計である。この統計の分析により、近代産業としてのピアノメーカーの成立・成長期と、アフリカ諸地域からの象牙輸出の増大との強い相関を確認することができた。イギリスに輸入された象牙のヨーロッパ内での動き、とりわけドイツへの輸出、およびアメリカ合衆国への輸出の実態を明らかにすることが次の課題となる。 一方、②にかんしては、アフリカ大陸における近代ピアノ普及の最も重要な場所の一つであった南アフリカのケープタウンを取り上げ、その普及の実態を把握するための調査を行った。2015年3月に実施した南アフリカ国立文書館ケープタウン分館での史料調査から、1)個人資産としてピアノの持ち込まれた19世紀の状況、2)教会、学校、および軍隊を通じてピアノの持ち込まれた20世紀の状況について、概況を把握することができた。販売店および入札にかかわる史料の分析も手掛けているが、それを普及の具体的な様相と結びつけることが次の課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のとおり、初年度である2015年度には、本研究の二つの課題のそれぞれについて、基礎的調査を進めることができた。ただし、南アフリカでの調査のために、十分な日数を確保することができず、存在を確認しつつ閲覧に至らなかった史料を残した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の進捗は、ひとえに時間(とくに海外出張日数)の確保にかかっている。効率的な調査を進めるために、文書館調査と聞き取り調査を組み合わせて一回の海外調査で複数の目的が達せられるように努めたい。 アフリカの文書館の場合には電子カタログの整備の不十分さがあり、事前の調査や史料の取り寄せが不可能な場合が多いが、今後利用予定のヨーロッパ(主としてイギリス、ドイツ)の文書館史料については電子ファイルの取り寄せを含め、時間の節約を図り、海外出張中に聞き取り調査・実地調査により多くの時間を割けるようにすることで、研究をより能率的に進められると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたとおりの海外調査日程を確保することができなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額として持ち越したものは、2015年度に購入することのできなかった史資料購入に充当する予定である。
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