研究実績の概要 |
アーネスト・サトウは1884年から1887年まで英国領事・弁理公使としてシャムに駐在した。本研究は、サトウの日記、書簡などの個人文書、及び英・タイの公文書史料に基づきシャム駐在期におけるアーネト・サトウの諸活動を追い、サトウが果たした役割をシャム・英、シャム・日本、シャム・清朝関係の文脈において多面的に明らかにし、サトウのシャム認識やアジア像を検討することを目的としている。 これまで収集してきたイギリスおよびタイの国立公文書館等に所蔵されるサトウの日記やシャム滞在中に諸方面と交換した書簡や報告書等の公文書史料を検討しつつ、並行して対応する時期におけるシャム側の外交文書や内政にかかわる史料も、華人の動きなども広く視野にいれて検討した。そこから得られた知見も踏まえて、"Chinese "Secret" Societies in Siam in the Late Nineteenth and Early Twentieth Centuries"という英文論文をまとめ、East Asian Studies、Vol. 37, No.2、pp.39~82 に発表した。その中で、これまでシャムの華人の秘密結社に関する研究の検討視角が限られてきたことを指摘するとともに、この問題に関するシャム政府とイギリスなど条約締結国との交渉および歴史叙述の問題も含めて検討し、領事裁判権の問題が影響を及ぼしていた様を考察した。 並行してシャムを離れて以降1880年代末から90年代におけるサトウのシャム外交への関与について史料を確認つつ論考を準備した。
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