研究課題/領域番号 |
15K12943
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
水野 博子 明治大学, 文学部, 専任准教授 (20335392)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 戦争犠牲者 / オーストリア / 国民 / 犠牲者国民 / 犠牲者支援 / 犠牲者援護 |
研究実績の概要 |
今年度は、主にこれまでに調査した史料の解析を進め、その解析結果を一部踏まえた学会報告及び論文執筆を行った。 1)まず、2017年5月に一橋大学で開催された日本西洋史学会において、本科研テーマにかかる自由論題報告を行い、司会者の小沢弘明氏をはじめ、フロアーとのディスカッションを通して、批判的な討論を行うことができた。その際、戦争犠牲者のための補償政策として、「援護」という概念と「扶助」という概念をどのように使い分けるべきかを論じた。また、ユダヤ系の人びとの間にも第一次世界大戦に従軍した経験を持つ人びとが、1945年以後も戦争犠牲者援護政策の対象となった一方で、ナチ期に迫害を受けた人びとの場合は、抵抗運動の犠牲者の中で消極的な立ち位置を与えられたにすぎず、別途、被迫害者のための、しかし極めて不十分な支援政策の範疇となったため、戦争犠牲者援護政策には大きな矛盾が生じていたことが具体的な史料の解析を通して明らかとなった。 2)学会報告での成果を踏まえて、「戦争犠牲者」というカテゴリーが人種や出自や宗教などを理由に迫害の犠牲となった人びとへの補償の問題とどのような形で関連していたのかを史料解析に基づく具体的な事例をもとに検討し、論文執筆を行った。 3)2016年度中に招へいしたアンドレア・シュトゥルッツ氏の講演原稿を出版用に整備、脱稿した。刊行は2018年度中をめどに行う予定である。 以上のように、2017年度は、2015年度、2016年度中にすでに収集した史料解析を急ぎ、その研究成果を公表する作業に力点をおいたため、現地の文書館における史料収集作業を終了することができなかった。そのため、本課題の実施期間を延長し、2018年度には史料収集の一定のめどをつけ、最終的な成果発表に向けた準備を進めるつもりである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究にかかる史料が当初の予想を大幅に上回って膨大な量に上っていたため、一部の史料収集を研究プロジェクトの最初の2年間で行い、まずはその解析成果を公表する作業を優先した。そのため、国内外での学会発表及び論文執筆の方は順調に進めることができた。一方、最終年度の2017年度中に史料収集を完了させるには至らなかったため、もう一年、プロジェクト実施期間を延長したことから、全体としてはやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は夏季または春季長期休暇を使って、2~3週間をめどにウィーンに史料収集に赴き、史料収集の作業完了を目指す。そして、収集した史料の解析を急ぎ、最終的な成果発表のための論文執筆に向けた準備を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
夏季休暇中または冬期休暇中に史料収集に赴く予定であったが、すでに収集を終えた史料の解析及びその成果発表を優先して行ったため、残りの史料の収集は期間延長して、2018年度中に行うことにしたため。
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