2016年度は、2015年度の研究で確立した写真測量・SfMによる三次元計測の手法について、発掘調査現場およびその後の出土資料の三次元情報化の過程における問題点の解消と、即応性・応用利用の研究によって、取得される情報の精度向上と利用局面の拡大を図った。具体的には、5月に北海道利尻富士町沼浦海水浴場遺跡の第1次発掘調査において、前年度の礼文町浜中2遺跡での調査に引き続いて、小規模体制による発掘調査という環境下での各種計測作業について、SfMによる三次元計測でのデータ収集を行った。今年度は新たに、堆積土層各層の上面観を3Dモデル及び抽出オルソ画像という形で累積的に収集することを試みた。これによって、計測作業の省力化と取得計測データの精度向上が同時に実現できることを確認した。次に、8月から9月にかけてイタリア共和国ソンマ・ヴェスヴィアーナ遺跡の第14次発掘調査において、前年度に引き続き火山性土石流による自然堆積と人工堆積が混在する大深度の大規模堆積層断面の一括三次元計測をSfMによって行った。今年度はさらに、3Dモデル化した大規模土層断面からオルソ画像を抽出し、発掘調査現場にフィードバックしてタブレット上で分層線と注記を追加することで情報を補完することを試みた。この結果、従来の土層断面図よりも作業工程を省力化しつつ、精度・情報量ともに向上したデータを収集できることを確認した。他に、10月に沼浦海水浴場遺跡において、UAV空撮による周辺地形測量を行った。これによって、マール地形内に形成されているという沼浦海水浴場遺跡の立地上の特徴を視覚的に再確認した。これら現場での作業と並行して、沼浦海水浴場遺跡出土資料の3Dモデル化作業を行い、現場で収集したデータと併せて報告書を刊行した。また、3月にはイタリア共和国タルクィニアにおいて、制約のある環境下での遺物の3Dモデル化作業も行った。
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