研究課題
当初、平成27年度に予定していたオーストラリア調査と平成28年度に予定していたカナダ調査の順番を逆にし、カナダ調査を最初に行った。日本への導入を想定した場合、カナダの政策である州指名プログラム(Provincial Nomination Program)のほうがより示唆に富んでいると判断したためである。このプログラムの導入が、カナダ国内で最も成功していると評価されているマニトバ州の政府職員、カナダ連邦政府のCIC(Citizenship and Immigration Canada)においてこのプログラムを統括している部署の職員、および、オンタリオ工科大学の研究者に、詳細なインタビュー調査を実施するとともに、関連のデータや文書を収集した。この調査により、政策導入の経緯・背景や、政策の効果や問題点などについて、詳細な成果を得た。例えば、この移民政策は州主導で実施しうる点が重要な特色となっているが、政策の導入には、労働市場の活況度の違いの影響をうけて、明らかな地域差があり、フランス語圏の大西洋諸州で低調であり、英語圏にあたるマニトバ以西のプレーリー諸州や太平洋岸のブリティッシュコロンビア州で好調である。マニトバ州では、州都のウイニペグはもちろんのこと、第2位以下の中小都市や農村部への移民の分散にも、大きな貢献をしていることが判明した。カナダの州指名プログラムが、疲弊感を強めている日本の地方圏の活性化に、重要な一つのモデルとなることは、間違いないように思われる。一方、日本の地方圏の自治体での調査は、予算の制約のため、ほとんど実施できなかった。
2: おおむね順調に進展している
カナダでのインタビュー調査によって、たとえば、次のような重要な知見を得た。①2007-2014年のデータによると、州指名プログラムによる流入者数は、マニトバ以外の州(特に、サスカチュワン州・アルバータ州・ブリティッシュコロンビア州)でも急増している。②このプログラムによる移民は、カナダ入国当初から目的地選択の自由を約束されているにもかかわらず、流入した州に定着する傾向が顕著で、他州への流出は少ない。とはいえ、インタビュー調査による被験者からの回答内容や、入手した一連の文書の分析は、まだ不充分であり、今後詳細に分析する必要がある。
当初、平成27年度に予定していたオーストラリア調査を、平成28年度に実施の予定である。具体的な調査は、地方圏の州・準州の振興のために実施されている州特定地域人口移動(State-specific and Regional Migration)プログラムが、オーストラリア国内で最も成功していると評価されている南オーストラリア州の政府職員、および、オーストラリア政府においてこのプログラムを統括している部署の職員に、詳細なインタビュー調査を実施するとともに、関連のデータや文書を収集する予定である。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Population, Space and Place
巻: undecided ページ: undecided
10.1002/psp.1975