研究課題/領域番号 |
15K12952
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山本 健兒 九州大学, 経済学研究院, 教授 (50136355)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 経済・交通地理学 / 周辺 / 地域 / 経済発展 / 中欧 / エムスラント / フォラールベルク / 隠れたチャンピオン |
研究実績の概要 |
7月末にドイツ、ニーダーザクセン州エムスラント郡文書館を訪問し、エムスラントの開発に関する公的資料や立地企業に関する地元新聞に掲載された地元企業に関する記事などを収集するとともに、文書館長シュップ氏や郡役所企業支援担当係官クルーゼ氏などから、エムスラント郡所在企業に関する聞き取りを行った。また、前年度の研究成果の一部を英文レポートにまとめ、地域整備国土計画アカデミー前事務局長のショーリヒ教授に提出し、これをもとにディスカッションを行なった。 8月初旬に、オーストリア、フォラールベルク州文書館と州立図書館で、同州政府による経済振興政策、および地元企業に関する資料の収集を行うとともに、同州出身のハイデルベルク大学栄誉教授モイスブルガー氏に、研究成果の一部を英文レポートにまとめて提出し、これをもとにディスカッションを行なった。(なお、フォーアアルルベルク、とこれまでカタカナ表記してきたが、現地での発音に倣ってフォラールベルクと修正表記する。) これらの現地調査により、上記2つの地域の経済発展は、グローバライズする経済の中で、「隠れたチャンピオン」と呼ばれる、特定ニッチ分野の国際市場で高いシェアを持つ企業の成長によって可能になっていることが明らかとなった。エムスラントではマイヤー造船所や農業機械とトレーラーを生産するクローネ社がその代表である。フォラールベルクではケーブルカー製造のドッペルマイヤー社や業務用照明器具製造のツムトーベル社がその典型である。いずれにしても、人口30万人前後という小規模地域でありながら産業構成は、サービス部門も含めて多様性に富んでいることが特筆される。 こうした研究成果の一部を、人文地理学会2016年度大会において、「オーストリア、フォラールベルク州の産業構造転換―地理的「周辺」小規模州の経済活力―」というタイトルで報告し、聴取者とディスカッションした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本では、各国政府が出版する統計書や、ごく簡単な解説書(10数年から30年以上前に書かれた論文を含む)以外にはほとんど情報が得られなかった中欧の小規模農村地域について、その経済発展を支える具体的な企業の活動の一端が明らかになり、また、それら小規模地域の経済発展に関する地元政府(地方自治体)の政策が明らかになりつつあるから。 また、それら地元企業を訪問インタビューするための協力を、公的ないし準公的機関の職員を通じて得ることができる見通しを得たので。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度には、地方政府や地元企業に関する文書資料の収集と読解とに集中し、企業インタビューにまでは踏み込めなかったので、2017年度には各地元で協力を得られる企業との日程調整を行い、夏季に現地訪問してインタビューを行なう予定である。併せて、企業に関する新聞記事などの記録資料収集も不十分だったので、これを地元文書館などで行なう。さらに、研究対象地域のうち、スイスにおけるシャフハウゼン経済の発展に関する学会報告を行うとともに、エムスラントとフォラールベルクも含めて、各地域の経済発展に関する論文を執筆し、公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度夏に、ドイツのアレクサンダー・フォン・フンボルト財団から、フンボルト賞受賞者再招待プログラムの枠組みで、ハイデルベルク大学に3ヶ月間研究滞在することができた。そのため、現地調査に必要な旅費のうち日独往復渡航費を、科研費から支出する必要がなくなったので次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度8月末から9月半ばにかけて現地調査を行ない、かつ調査対象地域に関する学術的知見を持つ現地研究者等とのディスカッションを行なうための旅費に充当する。
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