研究課題/領域番号 |
15K12955
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
関根 久雄 筑波大学, 人文社会系, 教授 (60283462)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 文化人類学 / ダイバーシティ / 開発 / ビジネス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、国内における企業のダイバーシティ戦略(ジェンダー、国籍、障害、ライフスタイル等の多様性を活かす取り組み)を企業関係者個人のレベルから人類学的にアプローチし、企業環境における多文化的状況の創造のプロセスを民族誌的に記述し、企業組織における「真の」ダイバーシティ状況を実現するための条件を明らかにすることである。 平成27年度においては、主にダイバーシティ・マネジメントに関する文献を収集し、企業のダイバーシティに関する取り組み事例の収集を行った。 さらに、筑波大学において「ダイバーシティと企業」と題する講演会を企画し、株式会社電通・ビジネスクリエーションセンター/電通総研研究主幹に、企業ガバナンスとしてのダイバーシティ、マーケティング戦略としてのダイバーシティ双方に関する国内企業の取り組み事例について講演をしていただくと共に、今後の本研究課題の実施に関わる協働の可能性についても基本的合意を得ることができた。また、日本文化人類学会第49回研究大会(平成27年5月30日、大阪国際交流センター)の企画セッション、「人類学教育と応答性-人類学者の再生産モデルを超えて-」(代表・伊藤泰信)において、研究発表「多分野における応答性-『ダイバーシティ・マネジメント』 教育における人類学」をおこない、人類学教育と企業活動との接点に関する問題提起をおこなった。そのことに関連し、筑波大学の総合科目(教養科目)の一つとして「ダイバーシティ・スタディーズ入門」を開講し、企業のみならず、民族、移民、障害、LGBTなどを含めて現代社会における様々なダイバーシティの側面について講義し、実践人類学の一部としてのダイバーシティ研究のもつ可能性について具体的に検証をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度においては、ダイバーシティ・マネジメントおよび経営人類学に関する文献収集と実践事例の収集をおこなうことを主たる目的とし、同時に次年度以降のフィールドワークの見通しを図り、本研究遂課題遂行のための基盤作りを主眼としていた。 文献収集では、経営人類学およびダイバーシティ・マネジメントに関する経営学的先行研究を実践事例と共に、相当数収集することができ、それぞれの内容を整理し、本研究課題との接合について検討を行った。また、文献収集に併行して、申請者が勤務先大学において政治学、社会学、障がい科学など多分野の研究者と共に組織する研究グループを通じて連携してきた企業および非営利団体による実践事例についても、本研究課題のための有効な事例として収拾した。 次年度においては、上記学内研究グループが連携する企業と協働するかたちで具体的なインタビュー等の調査を実施する予定であり、当該企業の関係者とは概ね協働の合意を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
原著論文を中心にダイバーシティ・マネジメントに関する先行研究の収集を継続させる。さらに、フィールドワークを開始し、対象企業におけるダイバーシティ戦略の内容、その前提となる「コンフリクト」の内容、ダイバーシティに関わる具体的な施策とそれに基づく企業内アクティビティの内容、アクター間の関係性、アクティビティを進める過程で浮かび上がる新たなコンフリクトの内容、それらから見えてくる企業文化のあり様などを、主として当該事象に関係する個人に焦点をあてて調査を行う。対象企業は協働予定の企業を中心に行うが、適宜調査の過程で臨機応変に拡大していく予定である。 平成28年度の後半には学会発表のためのデータ整理及び分析作業を進める。
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