研究課題
本年度は、これまでの研究成果を取りまとめ、その成果を口頭発表及び国際ジャーナルに投稿した。また、昨年度に投稿していた論文が二編ともに国際ジャーナルに掲載された。本年度の研究では、昨年までの水文モデルについての調査研究をより広い文脈に位置付けた。ここでは、気候変動及び環境変動の予測においては、水文モデルを媒介として多様なモデル・シミュレーション技術が結び付けられていることを明らかにした。こうしたモデルはしばしばコンピューター科学や生態学といったことなる分野からもたらされたものであり、ここではモデルを媒介とした知識の分野横断的な動きを見ることができる。本年度の研究活動では、こうした分野横断的な動きを概観し、マッピングすることによって、水循環のシミュレーション技術が、未来を予測するための多様なテクノロジーと想像力の中にどのように位置づいているのかを明らかにした。こうした調査研究の結果、特に明らかになったのは、有機体の行動をシミュレーションするために発展してきた適応複雑系と呼ばれるモデル技術の役割である。適応複雑系は、機械的なモデルによって予測が不可能な、有機体の複雑な行動をモデル化するためにコンピューター科学で発展してきた方法である。この方法は現在、極めて複雑な環境変動、及び環境と社会の相互作用を予測するためのモデルとして広く利用されつつある。気候変動が引き起こす自然と社会の変化を予測する試みにおいては、複雑適応系は広く注目を集めている。本年度の研究では、複雑適応系というモデル技術を通して、環境と社会の未来についての想像力が「生命」についての想像力と密接に結びついているという予想外の結果を得ることができた。複雑適応系を開始た環境政治と生命科学の結びつきは、気候変動をめぐる想像力が、いわゆる生政治と密接に関連することを示している。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (3件)
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