研究課題/領域番号 |
15K12958
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
岡田 浩樹 神戸大学, その他の研究科, 教授 (90299058)
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研究分担者 |
岩谷 洋史 国立民族学博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 研究員 (00508872)
木村 大治 京都大学, 学内共同利用施設等, 教授 (40242573)
大村 敬一 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (40261250)
佐藤 知久 京都文教大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (70388213)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 宇宙開発 / 技術人類学 / 技術伝承 / オーラルヒストリー |
研究実績の概要 |
平成27年度は、(1)ライフストーリー調査。JAXA,旧NASDAのロケット開発に携わった技術者に対し、インタビュー調査を行った。インタビュー対象者は4名で、述べ8回、326時間の聞き取り調査を研究者3名およびJAXA側からの記録係2名の計5名により、主にJAXA東京事務所において行い、合わせて関連資料の収集を行った。主なインフォーマントは、ロケットの概念設計段階および予備設計に関わる技術者であり、部門としては、ロケット開発グループ、エンジン開発グループの技術者に焦点を当てた。(2)インタビューによって得られたデータの整理・分析作業および検討会を行った。主な内容は、インタビュー資料のテープ起こし。インフォーマントのチェック後、コーディング作業(補助雇傭)であり、また書き起こされたデータは、簡易製本する準備を行った加えてNASAの報告書に関する読書研究会を開催、述べ6回実施した。(3)研究分担者によるsub研究会開催。2ヶ月に1度のペースで、4-9月に3回、調査項目の検討研究会、調査データの検討会を行った。国立民族学博物館共同研究会に、「人類学からの宇宙開発研究」が採択されたことを受け、12月と2月に国立民族学博物館の共同研究会として専門家述べ4名を招聘し、関連する技術に関してのレクチャーを実施するとともに、本科研のデータに関連するヒアリングを行った。(4)オブザーバー参加として、JAXAおよび京都大学宇宙総合研究Unitとの共同開催を行い、3月には京都大学宇宙研究総合ユニットのワークショプにおいて、研究分担者1名がパネリストとして参加した。(5)2015年度 ISTS(国際航空宇宙工学会)でのパネル発表を行った。この他、宇宙ロケットの部品を製作する産業技術者に対するインタビュー調査を開始し、兵庫県豊岡市にある「東海バネ株式会社」で3回インタビュー調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題は宇宙開発技術者に関するオーラルヒストリー調査を通し、現代科学技術の「実践」の現場、そこでの「社会(集団)」「下位文化」の問題を明らかにしようとするものである。平成26年度はロケットのエンジン開発技術者に焦点を当て、JAXAおよび関係各機関およびインフォーマントの協力を得て、予想以上に多くの情報を得ることができた。ただし、その課程でいくつかの課題も明らかになった。オーラルヒストリー調査は、いわゆる公的な「歴史」やドキュメントに基づいた「正史」を前提に、そこからは見えない社会関係や判断の状況などを聞き取っていくのであるが、JAXA(のみならず他の機関も)そのような開発の過程に関するアーカイブが整備されておらず、インタビュー調査以前に科学史研究者などの助力を仰ぎながら、こちらが作成する作業が発生した。こうした未整理の文書資料の検討については、当該機関(JAXA)からも協力を要請されており、本研究課題とは別個に研究プロジェクトを立てる必要がある。また、宇宙開発はいくつかのセクションに分かれており、全貌を把握するためには、エンジン開発の他に、有人宇宙飛行や衛星など、全体マネージメントセクションに加え、いくつかのサブセクションの技術者についてのインタビュー調査を平行して行うことを要する。現状ではインタビュアーの数と時間が限られている。特に有人宇宙開発に関しては、技術者だけでなく計画マネージャーや宇宙飛行士その他、技術者以外のアクターが関わっており、それらに対する調査を行うかどうかが大きな課題となっている。また、宇宙課発に関しては、開発・設計・実験段階だけではなく、その実際の製造の現場の技術者についてのインタビュー調査も必要となることがわかった。このため、ケーススタディとして兵庫県に向上がある企業に関するインタビュー調査を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は25年度に引き続き、オーラルヒストリー調査と関係者へのヒアリング、データ検討を軸とする研究活動を行う。本研究課題は、萌芽的研究段階と位置づけられる。したがって、平成26年度は、ケーススタディ、今後の調査プランの作成、調査モデルの構築を目指し、一定程度まとまったデータの収集と分析に集中する。現在の進捗状況を受け、(1)ロケット・エンジン開発者に関するインタビュー調査、(2)有人宇宙開発関連技術者に焦点を絞り、資料を作成する。(3)日本の宇宙開発全体を見通すためのモデル構築のため、宇宙開発全体に関わったマネージャー、あるいはJAXA前理事(NASDA、ISAS管理関係者)のヒアリングを行う。調査件数を増やすために、東京JAXA事務所におけるロケットエンジン開発者に対するインタビュー調査に加え、国立民族学博物館共同研究を利用し、ヒアリングを実施し、それらの調査で得たデータを検討する研究集会を2ヶ月に1度の割合で実施する。同時に、宇宙開発産業関連の技術者に対する予備調査をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度に実施したオーラルヒストリーインタビューの書き起こし仮製本(研究グループ、JAXAおよび、インフォーマント保管用:公開版は情報守秘、個人情報保護の観点からのチェックを経て2016年度公刊)に際し、インフォーマントのテキストチェックが病気等のため遅れたため、翌年度持ち越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
インフォ-マントからのフィードバックを4月末に受けたことにより、仮製本制作作業を再開し、 6月末までには予定していた予算を使用する。
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