研究課題/領域番号 |
15K12964
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研究機関 | 国立歴史民俗博物館 |
研究代表者 |
山田 慎也 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (90311133)
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研究分担者 |
小谷 みどり 身延山大学, 仏教学部, その他 (50633294)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 行旅死亡人 / 行政 / 孤独死 / 火葬 / 官報 |
研究実績の概要 |
官報における行旅死亡人公報のデータの整理分析により、市町村によって行旅死亡人の対応がかなり異なることが判明した。行政が自ら納骨場所を持っている地域や、寺院等に依頼する地域、またそれを担当する部署も多様であった。火葬に関しては、東京などの民営の火葬場が主であるが、自社努力によって火葬費用の減額が行われていることも判明した。これは民生といわれる生活保護受給者の葬儀でも同様であった。こうした多様性をふまえ来年度以降の項目を整理した。 また行政による葬儀サービスの提供の事例として、松本市の葬祭センターの調査を行った。ここでは、かつては市民のほとんどが利用していたことが明らかになった。特に市職員が納棺等のサービスまで行っていた点は特筆に値する。しかし全国で斎場の利用が進むなかで、次第に斎場利用を目的として葬祭センターの利用が行われなくなっていった。また葬祭センターのサービスは、葬儀を積極的に対応している神宮寺においては、困窮者などによって利用されており、今後の行政の葬儀サービス提供のあり方を考える時期に来ていると考えられる。 困窮者等の葬送について、東京では社会福祉法人の助葬会が行っていた。大正期の設立当初から困窮者のための納骨堂の設置を計画しており、皇室からの下賜により納骨堂を設置し、それが現在の恍惚堂の基礎となっており、葬儀と埋葬の一体的対応がなされてきたことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査項目の検討するうえで、火葬の方式や担当部署、遺骨の安置場所等、各地方公共団体によって扱いが異なっている。近親者のいない人の公的対応の傾向を把握するため、今年度は官報における行旅死亡人の広報をデータ化し、その広がりを把握した。 さらに行政の提供する葬儀サービスとして、長野県松本市の市営葬祭センターの調査を行った。松本市では1926年から松本市営葬祭センターが設立されその利用が浸透しており、現在、指定管理者制度に移行してもサービスを提供しているが、近年その利用は減少している。 また困窮者等の葬送について、東京で貧困者の葬送を行っていた社会福祉法人の助葬会の調査に着手し、また資料も収集した。
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今後の研究の推進方策 |
官報の整理は引き続き行いつつ、その情報をふまえて、地方公共団体への聞き取り調査を行う。さらに現在行政による葬儀サービスは葬儀の斎場利用やより細かいサービスへの需要のため、利用が少なくなっており、状況の変化を努めて把握するようにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
各地方公共団体の調査にあたり、調査対象となる担当部局や納骨の受け入れ先などの多様性を把握するために、まず官報による行旅死亡人公報の調査を行い、それにもとづいて調査項目を作成しているため、聞き取り調査先が予定件数より少なかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度以降、聞き取り調査で出張するため、予算を使用する予定である。
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