3年間にわたる調査で、10政令指定都市の無縁故者の葬送について調査を行った。法令で市町村が火葬納骨をすることになっているが、その具体的取り扱いは都市によって多様であることがわかった。 葬送に関しては基本は直葬であり、葬儀社が担当することになるが、名古屋市のように祭壇を組み読経を行っている市もあった。また最終的な納骨堂も福岡市の場合には、1年だけ個別安置し、その後第二頸椎など一部だけビニールに入れて永久保存をする都市がある一方、多くの市町村は5年など一定年限で合葬する場合が多い。近年、引き取り手のない遺骨が増加し、市設の納骨堂に安置しきれずに民間に保管を委託している市もあり、対応に苦慮している市も多い。さらに一般市民と同じ納骨堂に安置する都市が京都市と札幌市であり、こうした施設ではつねに参拝者が途切れないことが把握できた。 さらに慰霊祭については、実施している都市が多い。その場合市が主催する場合は無宗教式で行うが、社会福祉法人主催の札幌市や名古屋市の場合には、仏式の宗教儀礼が行われている。また京都市のように、市主催の儀礼と市民主催の儀礼にわかれ、市民主催の儀礼の場合には市の仏教各宗派や神道、キリスト教、新宗教系などの宗教団体が輪番で儀礼を行うようになっている。そして市民参加をどのように促していくかが、今後近親者無き人が増えていくなかで、課題となっていると思われる。 さらに岡山県玉野市は市民葬祭制度を設定し、祭壇や柩などの消耗品などを無償で提供し、市民のほとんどが利用していたが、近年自宅葬や公民館などでの葬儀が減少し、業者の斎場で行うようになったことで、その利用は減少している。以前調査を行った松本市や習志野市も、業者の斎場の利用が進むことで、市民葬が減少しており、必要とされる葬儀サービスの質が変わっていることが把握できた。
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