日本では無政府資本主義のみならず、リバタリアニズムに関する研究ですらも相対的に稀であり、これを取り上げること自体に意義はあろうと確信している。欧米諸国においても、無政府資本主義を唱える論考はあっても、無政府資本主義に関する学術的研究は多いとはいえず、特定分野における民営化という個別研究に留まる。本研究の学術的特色と意義は、実証研究と規範理論の両面から、統合的に無政府資本主義の意義と可能性を分析の俎上に登らせたことであろう。研究成果は、無政府資本主義の実証主義的・規範論的意義を確認する複数の学術論文の発表に加えて、現代国家の守備範囲の抜本的見直し、現代正義論の活性化に一石を投じることであった。
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