研究課題/領域番号 |
15K12969
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
森元 拓 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (50374179)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 上杉慎吉 / 美濃部達吉 / 天皇機関説論争 / 天皇機関説事件 / 天皇主権説 / 国体憲法学派 |
研究実績の概要 |
本研究は、今日ではほとんど省みられることのない上杉慎吉の憲法学を改めて検討し、その法思想史的意義を明らかにしようというものである。具体的には、(1)上杉の法理論は、国粋的なものとして「検討に値しない」と思われているが、西洋の法思想の伝統に基づいて構築されていること、(2) 上杉憲法学が「西洋と非西洋の間」に存在する日本の隘路と可能性を自覚し克服しようとした「近代の超克」論と同じ問題地平に立ったものと考え、上杉憲法学の意義と射程について検討する。 研究2年目の2016年度は、1年目の研究に基づき発表した2つの論究(『近代法思想史入門』(共著、法律文化社、2016年5月)及び『法思想の水脈』(共著、法律文化社、2016年4月))をふまえ、これらの論究を更に深化・発展させるための調査研究を行なった。具体的には、上杉慎吉の渡欧中の業績を辿るためにドイツにおける調査研究を行なった。 また、思想史研究はともすれば独善的に陥りがちになるため、他の研究者との意見交換は特に重要と考えている。このため、本年度は、特に、研究課題について、他の研究者との意見交換を行うことに注力した。具体的には、北陸公法学研究会(6月、金沢)で報告を行ない、法理学研究会(12月、京都)及び東京法哲学研究会(12月、東京)での合評会に著者として参加した。また、法哲学会(11月、東京)や日中公法学シンポジウム(11月、那覇)、日中研究者交流会(8月、札幌)に参加し、研究課題について意見交換を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1年目を終えた際にも示したが、本研究の射程は、当初予想したものよりもはるかに広く深いものであった。このため、研究1年目に引き続き、本年度も、上杉・美濃部の法理論の検討に留まらず、黒田覚や佐々木惣一、筧克彦、里見岸雄などの法理論の研究を行なった。このような研究は、それ自体も意味を持つものであるが、それ以上に、戦前日本の公法学における上杉憲法学の再定位に貢献するものであった。 また、本年度は、積極的に各研究会や学会等に参加し、他の研究者と意見交換を行なったが、その際に得られた示唆やアドヴァイス等は極めて有意義であった。
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今後の研究の推進方策 |
先に述べたとおり、本研究の射程は、はるかに広く深い。このため、上杉と美濃部の法理論の検討のみに拘泥することなく、他の公法学者(黒田、佐々木、筧、里見等)の法理論を研究し、彼等の法理論との関連性をも考慮しつつ、上杉憲法学の意義について再構築する必要がある。このため、上杉憲法学の再構築に注力しつつ、戦前日本の公法学者達の法理論にも引き続き目を向けていくべきであると考えている。 また、多種多様な研究交流を引き続き重視したいと考えている。本研究は、単なる懐古趣味的研究に留まるものではなく、今後の日本の立憲主義のありようを考察する一助になりうるものであると考えている。このため、様々な領域の研究者との研究交流・意見交換を積極的に進めていきたい。
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